ロシアのドローン部隊増強を宣伝する看板の前を歩く人(2月20日サンクトペテルブルクで、写真:AP/アフロ)
(英エコノミスト誌 2026年2月21日号)
ロシア大統領は戦争に勝てないが、平和も恐れている。
血みどろの戦いを4年も続ければ、どちらも勝てない戦争は自然に燃え尽きると思われていたことだろう。だが、ウクライナの戦争は違った。そして、その責任は1人の男にある。
ウラジーミル・プーチン大統領は自縄自縛に陥っている。同氏が勝利と呼べる状況を、ウクライナにいるロシア軍がもたらせる可能性は小さくなりつつある。
2月半ばにスイスのジュネーブで継続された和平協議では、ドナルド・トランプ米大統領がウクライナに領土の割譲を強いるため、この状況から抜け出す道がプーチン氏に与えられると考える人が多かった。
実際には、この脱出ルートが実現する可能性は薄くなっている。
それに、仮に和平協議がまとまったとしても、ロシア国内に及ぶ余波は経済と政治を不安定にする恐れがあり、史上最も偉大なツァーリ(ロシア皇帝)の列に加わろうというプーチン氏の目論見も崩れかねない。
4年間で60キロしか進軍できず、戦力は消耗する一方
大統領が直面する第1の問題は戦場にある。
1941年6月から1945年5月まで続いたいわゆる「大祖国戦争」では、赤軍はモスクワからベルリンまで1600キロ進撃した。
ところが、これよりも長期に及んでいる今回の戦争で主戦場になっているドネツク州のロシア軍は60キロしか進んでいない。米国で言えば首都ワシントンからボルティモアまでの距離だ。
ロシアはウクライナの防御線を突破できるだけの戦力を生み出せていない。
前線から10~30キロの範囲はドローンを使ってすべてを見通す操縦者に狙われる恐れが大きい「キルゾーン」であり、兵士や装備品を集結させれば格好の標的になる。
たとえロシア軍がウクライナの防御線を突破しても、その成果を生かすのは容易でない。
今のままでは、プーチン氏にこの状況を変えることはできない。侵攻開始から3年間、ロシアは兵力を増強してきた。
ところが昨年末には、集める兵士の数よりも失われる兵士の方が多くなっている。残っている兵士は練度も士気も低く、脱走率がかつてなく高い。
また、ロシア軍は密輸した携帯電話端末を攻撃目標の設定に利用してきたが、衛星通信「スターリンク」との接続を切られてしまった。
当のロシア政府も、前線での通信に利用されてきたアプリ「テレグラム」を遮断している。