ポピュリズムの土壌を作った者が果実を得る構図
ここまで読めば、皮肉な構図が見えてくるだろう。
政治不信を生んだのは、裏金問題を起こした自民党だ。物価高を招いたのも、アベノミクスを推進した自民党だ。
この2つが「国民受けするバラマキ政策」がウケる土壌を作った。そして今、その土壌の上で最も支持を集めているのが、高市首相率いる自民党なのである。
高市首相は、政治不信と結びつきやすい「おじさん・おじいさん」「はっきり言わない」という従来の政治家像から離れている。報道では「初の女性首相という象徴性」「歯切れの良い話し方」「従来の男性中心の政治との違い」と結びつけて語られている。英フィナンシャル・タイムズも、高市首相の「スター性」が熱狂を生んでいる、と指摘している。
経済学の理論に従えば、人気があるから正しいわけではない。人気の源が「政治への不信感」にあるとき、断言したり、敵を作ったり、分かりやすい言葉で訴える政治家が有利になる。それは政策の良し悪しとは別の話だ。
自らが蒔いた種で育った土壌から、自らが果実を収穫する。
政治不信を生み、物価高の原因となった円安経済を作ったアベノミクスの後継者に、多くの有権者が票を投じている。結局、今回も私たちは自民党の思惑通りに踊らされているのかもしれない。
【参考文献】
・Acemoglu, D., Egorov, G., & Sonin, K. (2013).
A political theory of populism. Quarterly Journal of Economics, 128(2), 771–805.
https://doi.org/10.1093/qje/qjs044
・Jennings, C. (2011).
The good, the bad and the populist: A model of political agency with emotional voters. European Journal of Political Economy, 27(4), 611–624.
https://doi.org/10.1016/j.ejpoleco.2011.06.002
小泉秀人(こいずみ・ひでと)一橋大学イノベーション研究センター専任講師公共経済学・ミクロ理論が専門で、近年は運と格差をテーマに研究に取り組む。2011年アメリカ創価大学教養学部卒業、12年米エール大学経済学部修士課程修了、12〜13年イノベーション・フォー・パバティアクション研究員、13〜14年世界銀行短期コンサルタント、20年米ペンシルベニア大学ウォートン校応用学部博士後期課程修了、20年一橋大学イノベーション研究センター特任助教、21〜24年一橋大学イノベーション研究センター特任講師、23〜25年経済産業研究所(RIETI)政策エコノミスト、25年4月から現職。WEBサイト、YouTube「経済学解説チャンネル」