金をはじめとする貴金属相場は急ピッチの上昇を続けてきた(写真:FOTOGRIN/Shutterstock.com)
目次

高騰していた貴金属相場が急落した。ニューヨーク市場の先物(中心限月)で1月29日に1トロイオンス(約31.1グラム)5626ドルの最高値を記録した金相場は翌30日には一時4700ドル台まで下げ、最高値からの下落率は16%に達した。もともと値動きが荒い銀やプラチナの下げは同3〜4割に及ぶ。取引所の証拠金引き上げに加え、米連邦準備理事会の次の議長に「タカ派」ともされるウォーシュ元FRB理事が指名され、膨れ上がった投機買いが一気に巻き戻された格好だ。金相場の上昇トレンドは継続するのか。

(志田富雄:経済コラムニスト)

「ディべースメント(debasement)・トレード」とは

 金相場の上昇は昨年後半から加速し、「出遅れ感」のあった銀やプラチナ、パラジウム、非鉄金属の銅などにも投機的なマネーがなだれ込んだ。昨年末に一時急落し、危うさを露呈したことは年初に公開した今年の商品相場展望でも触れた。

注:グラフは1月28日までの価格

 山高ければ谷深し。今年に入ってさらに勢いの増した貴金属高騰が本格的な調整を迫られるのは時間の問題だったと言える。

◎関連記事
【2026年の商品市場】金価格の8年連続上昇なるか、ゴールドマンは年末4900ドル予想もETF投資急増には危うさ

 なぜ、ここまで買いの勢いがついてしまったのか。

 謎を解く一つのキーワードに「ディべースメント(debasement)・トレード」がある。これは、通貨価値の下落を見越して資産を移し替える動きのことだ。

 米ブルームバーグ通信が昨年10月に配信した記事によれば、通貨価値の低下から資産を守るというアイデアは同月のJPモルガンのリポートで紹介された。ローマ皇帝やイングランド王であったヘンリー8世が通貨に使う金や銀の量を減らし、価値を希薄化させた事例に由来するという。

 現代のドルや円は政府の信用が通貨価値の頼りだ。だが、昨今では16世紀のイングランドのように造幣局の製造能力を考える必要もなく、経済危機への対応などでマネーの供給量は膨張。通貨の価値は希薄化した。投資家は資産価値が目減りするのを防ごうと金や銀などに避難する。