鈴木農相は「おこめ券」の配布策を推したが…(写真:Hiroshi-Mori-Stock/Shutterstock.com)
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コメの価格高騰が社会問題となった2025年。今年のコメ生産量は増えたはずなのに価格は下がるどころか最高値を更新し、このまま越年しそうな気配さえある。ただ、現実には新米が出回り始めた夏以降、コメの売れ行きはがくんと落ち、在庫が急増した。需要がついてこない高値は早晩崩れるのが商品市場の常だ。どこかが安売りに走らないか、流通企業は戦々恐々に違いない。コメの高値はいつまで続くのか。

(志田富雄:経済コラムニスト)

パックご飯、おにぎりや弁当の価格も上昇

 農林水産省が発表した11月24〜30日時点のコメの平均店頭価格は、全国のスーパーからのPOS(販売時点情報管理)情報に基づくKSP-SP(東京・港)の分析で5キロ4335円となり、2週連続で上昇。農水省が集計を始めた2022年3月以降の最高値を3週ぶりに更新した。12月1〜7日の平均価格は14円下がったものの、前年同期を24.6%上回る高さだ。

 消費者物価指数で見た上昇率も10月のコメ類全体で前年同月比40%台と依然として大きい。24年1月に比べた上昇率は2倍を超す。原料高に工場の人件費や物流費高が加わり、無菌包装米飯(パックご飯)の価格も上昇。10月の値上がり率は41%に達した。おにぎりや弁当などの中食、寿司店など外食の価格上昇も目立つ。

 なぜコメ価格は上がり続けてしまうのか。現在のコメ市場はどういう状況なのか。

 まず公表されているデータを確認してみよう。

 今年の主食米生産が大幅に増えたことは間違いない。昨年来の高値と、農業協同組合がコメを確保しようと早々に集荷する際の概算金(仮払金)引き上げを表明した影響からだ。

 農水省が11月16日に公表した資料では、飼料米などの「新規需要米」や備蓄米から主食米にシフトする生産者が増え、主食用の作付面積は概算値で136万7000ヘクタールと前年産に比べ10万8000ヘクタール(約8.6%)も拡大した。

 昨年までの生産量予測が生産者の実感に合わないと批判されたため、農水省は今年産から銘柄米の選別のため各地で用いている1.8ミリ〜1.9ミリのふるい目幅での生産量の見通しをまとめている。今年産の収穫量(ふるい上米)は718万1000トンと66万2000トン増えた見込みで、2016年産の732万トン以来の多さだ。なお、ふるいによる選別で落とされた小粒なコメ(ふるい下米)も外食向けなどに主食用として流通する。

 一方、価格情報と同じPOSデータによると、販売量は新米が出回り始めた8月以降、目に見えて落ちた。6〜7月には1200トン近く売れる週もあったが、10月後半以降は800トン前後で低迷している。