各地で新米の収穫が進むが…(写真:共同通信社)
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新米が店頭に並び始めたが、コメの価格はなかなか下がらない。8月に書いた「猛暑・雨不足でまた生鮮野菜が…ぶり返す食料インフレの脅威」の中で、コメ価格高騰の主因は流通の目詰まりではなく、想定外に強いコメ需要に生産が追いつかない現状だと指摘した。では、何がコメ需要を押し上げているのか。主因は急増した外国人の消費である。

(志田 富雄:経済コラムニスト)

政府はインバウンドを加味した新たな算定方法を採用

 政府は、9月19日の食料・農業・農村政策会議の食糧部会で、7月時点で「今後検証」としていた今年産(25年7月〜26年6月)の需要について697万〜711万トンとの見通しを示した。

 すでにコメ需要は2年連続で増え、4年連続で供給不足となっている。昨年を振り返ると8月に巨大地震への注意(南海トラフ地震臨時情報)が発出され、消費者が家庭内備蓄を増やした。「コメが足りない、もっと値上がりしそうだ」という警戒感が強まると、いつもより多めに買う消費者も増える。その前にはウクライナ戦争後にパンなどの小麦製品が大幅に値上げされ、コメが想定的に割安になった時期もあった。

 ただ、いずれも一時的な要因であり、減り続けていたコメ需要が底入れしたようなグラフを見ると構造的な変化が起きているとみるべきだ。

出所:農林水産省

 何がコメ需要を底上げしたのか。主因は外国人による消費だ。9月19日の食糧部会で政府はインバウンド(訪日客)も加味した新たな算定方法で需要見通しを出したが、それは従来の見通しが実態を反映していなかったということでもある。

 では、外国人による消費がどれくらいのインパクトがあったのか。以下、詳細をみてみよう。

 政府は昨年、訪日外国人がどれくらいコメ消費を増やしているのか、いわゆるインバウンド需要について試算を示した。