
(平野秀樹:国土資源総研所長)
食管法廃止(1995年)から30年。
今さら米の価格を長期的にコントロールすることなどできないのに、連日報道されるのは、安い備蓄米の話題ばかりだ。38万トンの随契備蓄米は総消費量の20日分しかないから、劇場型報道の賞味期限はもう近い。
ただ、今日のコメ騒動を、単に選挙対策の短期的な人気取りだと見くびるなかれ。ポピュリストたちは、あえて価格問題に国民の関心を引き寄せ、次の一手――ばらまき予算のバーター(輸入米拡大)を見せないようにしているのかもしれない。
食料安全保障の“肝”はその先に
近くのスーパーに行くと、「肉」売り場では外国産が過半を占める。米国産、豪州産、ブラジル産、カナダ産等だ。年々、国産は追いやられているように見える。
同様に、そう遠くない将来、陳列棚には三種のコメ――①外国産米、②ブレンド米(外国産米+安い国産米)、③国産米(高級ブランド米)が並ぶだろう。
でも懐は寂しいから大方は、①と②しか買えないだろう。③は贅沢品になり、輸出に大きな伸びがなければ、国産米マーケットは先細っていくしかない。
5キロ当たり1705円の関税を払っても、外国産米は国産米より安いのでとめどなく入ってくる。もし日米関税交渉でさらに一歩、門戸を開いたら、もう止まらない。無策を続けるなら、コメも肉のようになってしまうはずだ。市場原理で考えるとそうなる。