AI時代の主役半導体はGPUのみにあらず

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 生成AIブームにおいて、NVIDIAの名がこれほどまでに語られる時代はかつてありませんでした。

 2023年以降、NVIDIAの時価総額は世界トップクラスに躍り出て、もはや半導体メーカーという枠を超え、AI産業そのものを牽引する存在になったのです。

 その背景には、GPU(Graphics Processing Unit=画像処理装置)という特殊な計算装置が、生成AIの黎明期から圧倒的な計算性能を提供し続けてきたという事実があります。

 しかし、GPUだけが主役ではありません。CPU(中央処理装置)、GPU、TPU(Tensor Processing Unit=AIに必要な行列計算を高速化した処理装置)、NPU(Neural Processing Unit=AIの推論に最適化された処理装置)といった多様なプロセッサーがそれぞれ異なる役割を持ち、AIの発展を支えているのです。

 経営者にとって、この違いを曖昧にしたままAI戦略を語ることは、かつてのインターネット黎明期に、通信回線とサーバーの違いも分からないままIT投資を判断していた状況に近いと感じます。

 今回はそれぞれの特徴を経営の視点で整理し直したいと思います。

 CPUは、企業の情報システムにおける総合司令塔といえます。人間の脳で言えば小脳です。

 古くは「IBM PC」に搭載された「インテル8088」から、現在の「Xeon」や「AMD EPYC」に至るまで、CPUは多様な処理を柔軟にこなすことを宿命づけられた存在ではないでしょうか。

 経営の現場でいえば、万能型の管理職に近いでしょう。

 会議、調整、判断と、やるべきことは幅広いのですが、ときに専門家には敵わない。

 一般的な業務システムは依然としてCPU中心に動いており、その安定性と互換性は企業ITの土台となっています。

 ただ、生成AIのように巨大な行列演算を一気に処理する必要がある分野では、CPUで対応するにはどうしても限界があり、コストも時間もかかり過ぎます。