知識の身につけ方が人間とAIでは異なる

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 生成AIが一般化したいま、多くの経営者の方々から同じ質問を受けるようになりました。

 大量の文書データを読み込んで知識を身につけるという点では、人間もAIも同じではないのかという問いです。

 最近、JBpressの読者の方々の間でもこのテーマが議論になっているとのことですが、結論から言えば、同じ言葉で語られていても、両者の学習は全く異なる世界に存在しています。

 それは例えるなら、同じ「海」という言葉を使っていても、プールの水と太平洋の海流ほど違うという話です。

 今回はこの断層を経営の視点から解きほぐしてみたいと思います。

 私はこれまでIT事業に携わり、多くの企業でAI導入を支援してきましたが、最初にぶつかるのは必ずこの誤解でした。

 AIが膨大なデータを吸い込む姿を見て、人間と同じように知識を蓄えているように見えるのです。

 特に米オープンAIの提供している生成AI「ChatGPT」やグーグルの「Gemini」などが自然な言葉で答えるものですから、つい人間的な「理解」をしているのでは、という錯覚に陥りがちです。

 しかし実態は、人間の学習とは構造も仕組みも目的も違います。

 違いを知らずにAI導入を進めると、組織は必ず混乱し、生産性どころか意思決定の質まで落とします。

 実際、国内のある製造業では、AIが理解しているものと誤解し、重要な技術文書の生成をAI任せにした結果、誤った工程指示が広まり現場が混乱したという例もあります。

 その時、現場の技術者が口を揃えて語ったのは「AIが意味を理解していると思い込んでいた」という反省でした。