画像処理への特化がAI時代に別の花咲かす
そこで脇役として登場したのがGPUです。
NVIDIAの「A100」や「H100」などが代表例ですが、それらはもともと映像処理のために生まれました。
多くのピクセルを同時に扱うという映像処理の構造が、実はAIモデルが必要とする膨大な並列計算と驚くほど相性が良かったのです。
経営の観点から言えば、GPUは圧倒的な実務処理能力を持つスペシャリストになります。脳で言えば右脳に当たるでしょう。
同質で大量の計算を並列に処理することを得意とし、企業のAI開発や推論処理の中核を担います。
生成AIのモデルを学習させるには、数百億から数兆のパラメータを繰り返し計算する必要があり、CPUでは対応しきれません。
GPUがなければオープンAIの生成AI「ChatGPT」のような巨大モデルは実現しなかったとも言えるでしょう。
TPUは、グーグルが自社のAIサービスを支えるために独自設計したプロセッサーです。
特徴は徹底的にAI学習に特化した構造で、巨大な行列演算の高速処理を可能にしています。
クラウドで提供されることが前提となっており、グーグル検索、「ユーチューブ」、「Gmail」などの裏側ではTPUクラスタが膨大なデータを処理しています。
経営で言うなら、自社専用に最適化された生産ラインのような位置づけです。特定のタスクに対して抜群に効率が良いのですが、汎用性は低く、他社が容易に追随できるものでもありません。
グーグルがAIインフラの競争で独自のポジションを取り続けている理由の一つは、このTPUの存在にあると言えます。
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