NPO法人フローレンスの駒崎弘樹氏(右から2人目)から要望書を受け取る小倉將信こども政策相(同3人目、肩書は当時)=2023年09月1日、こども家庭庁(写真:共同通信社)
(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)
NPO業界の顔によるコンプライアンス違反
2025年11月、日本の非営利セクターを牽引してきた認定NPO法人フローレンスを巡る疑惑が、ネットから始まり地上波でも報じられるなど社会に波紋を広げている。
◎認定NPOフローレンス謝罪 補助金使い建てた施設を担保に5000万円借金“違法状態” (テレビ朝日)
本件は、単なる一団体の不祥事にとどまらず、過去四半世紀にわたって形成されてきた日本の非営利セクターの構造的な課題を浮き彫りにした。この「フローレンス疑惑」を端緒として、日本の非営利セクターの歴史的変遷と構造的課題について論じたい。
なお筆者はフローレンス創業者の駒崎弘樹氏と幾度かメディアに共演した経験があるが、プライベートで交流する関係ではないことを述べておく。
インタビューに答える認定NPO法人フローレンス創業者の駒崎弘樹氏(写真:共同通信社)
2025年11月、渋谷区議会議員の指摘等により明らかになったのは、フローレンスが補助金を活用して取得した不動産に対して、法的に制限されているはずの「根抵当権」を設定していたというコンプライアンス違反の疑義である。
公的資金が投入された資産は、その適正な運用のために厳格な処分制限が課されるのが通例であり、無断での担保設定は補助金適正化法等の趣旨に反する。この事実は、長年にわたり政府の有識者会議に参加し、政策提言を行ってきた「業界の顔」ともいえる団体の重大なガバナンス上の課題を示唆する。
なぜ、このような事態が起きたのか。理由は現状わからない。今後、渋谷区や区長の関わりを含めて解明が進むだろう。
本稿では、やや遠回りだが日本の非営利セクターが発展してきた歴史的文脈と、そこで形成された独特の「規範」について言及してみたい。
