農水省発表は、1桁あるいはそれ以上少ない

 毎年、夏になると気になる発表がある。森林と農地の外資買収面積を、農水省が公表するのだ。

 こうした国土買収が本格的に始まったのは2008年だが、農水省は2010年以降(農地は2019年以降)、毎年欠かさず続けている。昨年8月の発表では、外資・外資系に買収された森林面積は1万79ヘクタール(06~23年の累計)、農地は158ヘクタール(17~23年の累計)だった。

 外国人の土地取得をめぐってはこれまでも、長崎県対馬での韓国資本による土地買収や、北海道での中国資本による森林買収などが問題視されてきた。外国人が土地を何ら制限なく売買できる国は世界で日本以外にはなく、「一定の制限を設けるべき」との声もある。

 筆者はこの問題を17年間追いかけているが、農水省が発表した外資買収面積はいつも過小だと思っている。実際に買われた農地は158ヘクタールではなく、2桁以上違っていて、1万5000ヘクタールをはるかに超えていると推定している。

 なぜなら、筆者が入手した情報によると、関東の某県には外国籍の個人と外資系法人が所有権または賃貸借権を有するとみられる農地が、4783ヘクタール(21年)もあるからだ。このうちの3728ヘクタール(全体の77.9%)を中国籍の者が取得しており、残りはスリランカ籍の者が255ヘクタール(同5.3%)、マレーシア籍の者が220ヘクタール(同4.6%)を取得していた。

 一県だけでこの数値である。だから、広大でかつ離農者が目立つ北海道や東北を丹念に調べていくと、外資買収農地はこの10倍あってもおかしくはないはずだ。