写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 世界的投資家ウォーレン・バフェット氏が株を保有していることでも知られる日本の「総合商社」。中でも5大商社と言われる、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅は創業100年を超える長寿企業だが、その特徴と強みとは何なのか。『商社ビジネス』(佐野智弘著/クロスメディア・パブリッシング)から一部を抜粋・再編集し、日本独自の業界である総合商社のビジネスに迫る。

 伊藤忠商事や三井物産の事業を通じて、総合商社が展開する食料ビジネスのモデルを紹介するとともに、三井物産と住友商事の取り組みを元に、資源・エネルギービジネスにおける総合商社の強みを解説する。

食料ビジネス

商社ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

 総合商社の食料ビジネスは、農業生産から加工・物流・販売までをグローバルに展開し、食のバリューチェーン全体を統合的に管理しています。川上では穀物の安定供給体制を構築し、川中では食品メーカーと連携して付加価値を創出。独自の物流網により効率化と食品ロス削減を実現しています。新興国市場での商品供給や地域経済への貢献、AI・IoTを活用した生産性向上や環境配慮型商品の開発にも注力し、持続可能な食料供給を目指しています。

 事業投資を通じて現地パートナーと協業し、技術移転や雇用創出を促進。食の安全・安心を確保しながら、世界の食料課題の解決に貢献しています。本節では、伊藤忠商事のDOLE事業と三井物産の動物性タンパク質事業を紹介します。

 伊藤忠商事は2013年、米国Dole Food Companyから約17億ドルでアジアの青果物事業とグローバル加工食品事業を買収し、商社における最大規模のM&AでDoleビジネスに本格参入しました。これにより、世界最大級の果物販売網と、主に北米市場での加工食品事業を獲得し、川上から川下までを網羅するグローバルサプライチェーンを構築しました。

 買収後は収益改善と持続可能性の両立を目指し、人材派遣や生産拠点の多角化、不採算事業の整理を推進。センサーやドローン、気象データを活用したスマート農業により、収量予測や最適収穫時期の判断精度を高め、省力化と収益安定化を実現しています。