写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 世界的投資家ウォーレン・バフェット氏が株を保有していることでも知られる日本の「総合商社」。中でも5大商社と言われる、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅は創業100年を超える長寿企業だが、その特徴と強みとは何なのか。『商社ビジネス』(佐野智弘著/クロスメディア・パブリッシング)から一部を抜粋・再編集し、日本独自の業界である総合商社のビジネスに迫る。

 豊田通商や双日が進めるモビリティビジネスの事例を通じ、移動の質の向上や脱炭素化に向けた総合商社の取り組みを紹介。さらに、三井物産と住友商事の取り組みを踏まえ、総合商社がヘルスケアビジネスを通じて目指す次世代型の医療モデルを解説する。

モビリティビジネス

商社ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

 総合商社のモビリティビジネスは、自動車・航空機・次世代モビリティなど多様な領域に展開されており、単なる輸出入にとどまらず、販売、整備、金融、データ活用、インフラ整備までを包括的に手がけています。

 電動化や自動運転、eVTOL(電動垂直離着陸機:空飛ぶクルマ)などの新技術にも対応し、地域の移動課題や脱炭素化に貢献。移動の質と持続可能性を両立する社会インフラとして進化を続けています。本節では、豊田通商の自動車ビジネスと、双日の航空機ビジネスを紹介します。

 豊田通商は、トヨタグループの中核商社として、トヨタ自動車の完成車輸出を起点に自動車ビジネスを展開してきました。1990年代以降は新興国を中心に販売代理店の経営やノックダウン生産、補給部品供給、アフターサービス、中古車流通、販売金融など、自動車バリューチェーン全体に事業を拡大。2006年のトーメンとの合併、2012年のCFAO社への出資によりアフリカでの販売網を強化。2024年にはカンボジアで現地組立事業も開始し、ASEAN地域でのプレゼンスも高めています。

 近年はモビリティの定義を「移動」全般へと拡張し、電動化・自動運転・デジタル化に対応した新事業に注力。車両や顧客データを活用したサービス開発、EVインフラ整備、物流ソリューションの提供などを進めています。医療用冷蔵庫メーカーと連携した「ワクチン保冷輸送車」はWHO認証を取得し、アフリカなどでの医療インフラ整備にも貢献しています。