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世界的投資家ウォーレン・バフェット氏が株を保有していることでも知られる日本の「総合商社」。中でも5大商社と言われる、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅は創業100年を超える長寿企業だが、その特徴と強みとは何なのか。『商社ビジネス』(佐野智弘著/クロスメディア・パブリッシング)から一部を抜粋・再編集し、日本独自の業界である総合商社のビジネスに迫る。
総合商社の収益において圧倒的に大きな比重を占める「事業投資・事業経営」。ベンチャーキャピタル(VC)やプライベートエクイティ(PE)ファンドとは異なる、商社独自の投資の目的とは?
事業投資・事業経営とは?
『商社ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)
総合商社では、トレーディングと事業投資・事業経営が車の両輪のように機能し、収益拡大に貢献しています。中でも、収益規模で見ると、トレーディングよりも事業投資・事業経営の方が圧倒的に大きな比重を占めています。本章では、商社の成長を支える事業投資・事業経営について解説します。
もともと商社の事業投資は、トレード強化を目的として始まりました。たとえば、原材料などの商材を投資先の商流に乗せて販売することで、トレードメリットを得るというものです。また、川上・川下企業へのマイノリティ出資を通じて、出資比率に応じた取引量を確保する狙いもありました。
やがて商社は、投資先に経営幹部や管理人材を派遣し、ハンズオン経営を行うようになります。さらに、新規事業開発や営業など、投資先に不足する機能を補う人材も送り込み、カネだけでなくヒトも出して企業価値の向上を図るようになりました。
商社の投資は、ベンチャーキャピタル(VC)のようにスタートアップに資金提供し、株式売却益を狙うものではありません。また、プライベート・エクイティ(PE)ファンドのように短期でリストラを断行するなどして、V字回復を目指す手法とも異なります。もちろん、そうした要素を含む場合もありますが、商社の投資は基本的に「長期目線」であり、目的は商権の獲得によるコミッションやマージン、事業利益や配当収入の確保にあります。






