写真提供:ロイター/共同通信イメージズ
世界的投資家ウォーレン・バフェット氏が株を保有していることでも知られる日本の「総合商社」。中でも5大商社と言われる、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅は創業100年を超える長寿企業だが、その特徴と強みとは何なのか。『商社ビジネス』(佐野智弘著/クロスメディア・パブリッシング)から一部を抜粋・再編集し、日本独自の業界である総合商社のビジネスに迫る。
ベンチャー企業の技術を束ね、脱炭素化という社会課題の解決に“面”で取り組む三井物産。同社の「カーボンバリューチェーン戦略」を支えるベンチャー3社との戦略的連携、総合商社ならではの協業モデルとは?
ベンチャーとの連携
『商社ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)
ここ10年、革新的な技術や独自のビジネスモデルを持つベンチャー企業が、日本や世界で台頭しています。これらの企業は、自らの強みを活かして社会課題の解決に貢献していますが、一社だけで成し遂げられることには限界があります。
一方、総合商社は自ら革新的な技術を持つわけではありませんが、ベンチャー企業への投資や業務提携を通じて、それらをつなぎ合わせ、社会課題を「面」で解決することができます。これこそが総合商社の存在意義であり、今後はベンチャー企業との協業がますます重要になると考えられます。
本節では、三井物産の「カーボンバリューチェーン戦略」とベンチャー企業との連携による脱炭素の推進を例に説明します。
三井物産は、脱炭素社会の実現に向けて「カーボンバリューチェーン戦略」を掲げ、エネルギーの供給から消費、排出量の可視化・削減・資源循環までを包括的に支援する取り組みを展開しています。この戦略の実行にあたり、三井物産は補完的な技術を持つ複数のスタートアップと連携する協業モデルを構築しています。
この取り組みは、「都市」「企業」「生活者」の3つのレイヤーに整理されています。「都市」ではスマートシティ開発や再エネインフラ整備を通じて脱炭素化を推進し、「企業」には温室効果ガス(GHG)排出量の可視化・削減支援を提供。「生活者」には、再エネ電力やe-fuel(合成燃料)を活用した行動変革を促し、カーボンニュートラルなライフスタイルの実現を目指しています。






