写真提供:©Piotr Swat/SOPA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ

「失われた30年」と言われる日本経済。しかし、逆境下でも成長し続ける企業がある。彼らはなぜ躍進を続けるのか。停滞する企業との決定的な違いは何か。184社の日本企業の業績を基に、強い企業の共通点を導き出した『高成長体質になる』(日経BP)から一部を抜粋。ベイカレント 常務執行役員の則武譲二氏がキーパーソンへのインタビューを通じ、高い成長率を誇る企業が備える「組織能力」を解き明かす。

 リクルートはなぜ「出る杭」を伸ばし、異論を力に変えられるのか。高成長を支える“意図的なカオス”とは何か。

リクルート
「意図的なカオス」と「内発的動機の最大化」
宿命と心理学が育んだリクルートの体質

高成長体質になる』(日経BP)
リクルート
執行役員 人事・サステナビリティ
西村優子氏

1997 年リクルート入社(現リクルートホールディングス)。2009年学び事業部・ケイコとマナブ.net 編集長。公益社団法人経済同友会出向を経て、2019年リクルートホールディングス人事・総務本部人事統括部部長、2021年経営企画本部サステナビリティトランスフォーメーション部部長。25年からリクルート執行役員。

――60年余りの歴史を積み重ねる中で、リクルートには独自の高成長体質が培われてきたことと思います。高成長につながる組織体質について、どんな考えをお持ちですか。

西村 リクルートの組織体質を考えたとき、背景として2つの要素が思い浮かびます。

 1つは、祖業が抱えていた宿命です。求人広告などの情報サービス業は模倣されやすく、参入障壁が低い。リクルートは創業間もないベンチャーのときから、先行してアセットを持つ大手企業に伍して戦わなくてはなりませんでした。加えて景気連動性が高く、景気が悪くなると広告ニーズが減り、赤字に陥りやすい。その中で持続的に成長するため、悩み、知恵を絞らねばなりませんでした。

 もう1つの要素は創業期メンバーの存在です。江副浩正も大沢武志も、東大の教育学部で心理学を学んでいました。リクルートは祖業が背負う宿命に心理学で立ち向かいました。唯一の財産である人を活かし、どうすれば創出価値を2倍、3倍にできるか、どうすれば生産性を2倍、3倍にできるかを考え抜いて実践した。これがリクルートの組織体質の基礎になっていると思います。

――心理学を切り口にしながら宿命に立ち向かったというのは興味深いお話です。具体的に、それはどんな仕組みや文化としてリクルートに導入され、機能しているのでしょうか。

西村 創業期からさまざまなことに取り組んでいますが、その中から2つご紹介します。1つは「意図的なカオスの創生」です。カオスを作り出すことで組織の固定化や階層化を徹底して避けました。もう1つは「欲求やモチベーションの向上による内発的動機の最大化」です。人間は内発的動機に基づいて行動してこそ、高いパフォーマンスを発揮すると信じ、実践したのです。