茨城県の航空自衛隊・百里基地周辺でも中国人による土地買収が確認されている(写真:共同通信社)
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(平野秀樹:国土資源総研所長)

 トランプ大統領は「グリーンランドを購入する」と言って波紋を広げているが、日本列島では先ごろ、「安全保障上重要な土地を中国が最も取得している」とのデータが政府(内閣府)から公表された。これに対して国内メディアは冷静で「懸念することはない」「何も問題はなかった」と是認し、それ以降はこの問題に触れていない。

 本当に大丈夫なのか?

「中国が最多だが懸念がある事例はなかった」

 1年前、岸田文雄首相(当時)は国会でこう答弁した。

〈外国人による不動産等の購入実態の把握については、国際法上の内外無差別の原則等に照らして慎重であるべきだと考えますが、まずは、重要土地等調査法に基づく重要施設周辺の土地等の把握、これを適切に進めたいと考えます〉(衆議院予算委員会2024.2.6)

 重要土地等調査法が施行されたのは2022年9月。水源地となる山林、あるいは離島や安全保障上の重要施設の隣接地などで外国人による土地買収が増大していることに対する懸念からようやくできた法律だ。

 同法の主旨は防衛施設や原発の周辺で変な土地利用があったらチェックして中止命令や勧告を出せるというもの。「安心していい」といえるほど十分ではないが、まずは規制の第一歩をということではじまった。内閣府はスケジュールどおり現況調査を進めてきた。

 2024年12月末、全国583カ所の重要施設のうち、その7割に当たる399カ所の周辺状況(23年度)が明らかになった。同法施行後はじめての発表だった。

 調査した区域の総面積は503ヘクタール。重要施設の周辺1km幅である。このうち「外国人や外国系企業」が取得した土地の合計は3.8ヘクタール(174筆)で、総面積の0.76%(筆数シェア:2.2%)を占めた。

 国別にみると、中国が最も多く1.6ヘクタール(87筆)で、外資買収面積全体の42.8%(筆数シェア:54.7%)を占めた。第2位は韓国で0.4ヘクタール(49筆)。第3位は台湾で0.3ヘクタール(46筆)だった。

 地区別に「土地及び建物」の取得数(筆個)をみると、中国が買占めのトップになっている地区は、全国45注視区域中、次の20地区であった。

①北海道/札幌駐屯地・藻岩山中継所・真駒内駐屯地(8筆個:以下同)、②宮城県/仙台駐屯地(1)、③茨城県/朝日燃料支処(6)、④同/百里基地(1)、⑤千葉県/下総データ基地(7)、⑥同/木更津飛行場・航空補給処・分屯基地(3)、⑦東京都/防衛省市ヶ谷庁舎(65)、⑧同/補給統制本部(29)、⑨同/練馬駐屯地(18)、⑩新潟県/新潟基地分遣隊(5)、⑪静岡県/浜松基地(2)、⑫滋賀県/大津駐屯地(5)、⑬兵庫県/川西・伊丹・千僧駐屯地(2)、⑭広島県/海田市駐屯地(1)、⑮香川県/善通寺駐屯地・大麻山弾薬庫(3)、⑯福岡県/福岡駐屯地・自衛隊福岡病院・春日基地(12)、⑰同/春日基地飛行場地区・板付飛行場・福岡空港(6)、⑱熊本県/北熊本駐屯地(2)、⑲沖縄県/知念高射教育訓練場(陸自・海自)(3)、⑳同/宮古島(2)