「真の支配者」が不明な土地

 注視区域ではないが、中国資本の有名リゾート地の所有権が日本法人のものとなり、短期間で転売が繰り返されているケースもある。北海道の星野リゾートトマムだ。2024年7月、復星集団(中国)から日本法人の合同会社YCH16(東京都港区)に売却され、その後も転売が続いている。真の所有者が誰なのか? わかりにくい。

冬のスキーだけでなく春から秋にかけての「雲海テラス」でも人気を集める星野リゾートトマム。施設の運営は星野リゾートが手がけるが、資本は中国企業となり、その後、東京の合同会社に転売されたのだが、真の所有者が誰なのか外部からは極めて分かりづらくなっている(写真:共同通信社)
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 近年の外資の登場の仕方として、海外のペーパーカンパニー(香港やケイマン諸島、バージン諸島等)を買収者とするケースは主流でなくなっている。誰もが閲覧できる登記簿に海外企業名を出すと、外資だと騒ぎになってしまうからだ。

 替わりにSPC(特別目的会社)やダミーの日本法人(合同会社等)を前面に立てる方式が増えてきた。合同会社なら毎年の決算は公表されないし、出資者は創設当時のものしか公表されない。だから真の支配者を秘匿できる。

「外資による国土買収問題」は今日、「実質的支配者が見えない所有者不明問題」に様変わりしているのである。