この実態に対し、各紙は次のように報道した。

「中国が最多だったが、安全保障上懸念がある事例は確認されなかった」(読売新聞24年12月24日付)

「外国人の阻害行為なし」「『重要施設の機能を阻害するような行為』は確認されなかった」(朝日新聞24年12月24日付)

 国家の安全保障目的で政府は調査したが何も問題はなかった、阻害行為は確認できず、懸念される事例はなかった、と平静さを強調したわけだが、これで一件落着なのだろうか。

日本の法人が「ダミー」になっている事例も

 北海道、青森、茨城、対馬、五島、奄美……。

 安全保障上懸念がある場所なのに重要土地等調査法の調査区域から漏れ、ノーマークで外資に買い叩かれている重要な場所はいくつもある。現在、おかしな利用形態になっている箇所も見られる。

 例えば、五島列島では重要施設から1.5km~2km離れた場所で、6社がまとまって手分けしながら計画的に買収し、風力発電名目で16カ所の用地をキープしている事例がある。しかし、なかなか風力発電は始まらない。

長崎県五島列島の福江島(写真:共同通信社)
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 中国系の色がつかないようダミー役がフロント企業(日本法人)として地上げと発電事業の事業者となっている。似たような動きをしている会社は北海道と東北にも出没している。このような形で進んでいる買収現場に出くわす機会が増えた。

 売り手と買い手の二者だけで金のやりとり(契約)を済ませ、登記簿はいじらず、届け出も省略していく。頻繁に住所や社名を変えたり、タイやシンガポールの企業でカムフラージュしたりして様子をみていく。ダミー役の法人を支配する者は最後まで秘匿したまま――といったやり口である。尻尾を摑まれないよう売り手に口止め工作を行っている可能性もある。こうした背景を一件ずつ洗い出し、解析していくことは手間がかかる。イタチごっこは避けられない。