ツキノワグマツキノワグマ(ylq/Shutterstock.com

(姫路大学特任教授:平野秀樹)

 各地の里山や農村地帯から、連日のようにクマによる被害の報告が相次いでいる。田畑や果樹園が荒らされるだけでなく、人的被害も多い。

 今日、クマ問題の次元は一ランク上がったと言っていいだろう。

 なぜこれほどまでにクマはヒトを襲うようになったのか。

クマ騒動の元凶

「クマが人間を襲うのはドングリが不足しているからだ」

 かつてそう信じて問題解決のために動いたNPO(民間非営利団体)があった。2004年、“ドングリを集めてほしい”と全国に募集したところ、たちまち4トンのドングリが集まった。しかし全国のドングリが交雑し、生態系に悪影響を及ぼす懸念が指摘された。2010年にはクリの実を真っ赤なナイロンネットに入れて、奥山の木の枝に置いた人がいた。親切のつもりで置いたのだろうが、「人里にクマを引き寄せるきっかけ」になり逆効果*1だとされた。里クマ(アーバン・ベア)を増やす手助けや、餌になる食材(残渣)の放置はできれば止めたい。

*1 WWFジャパン2011.10.13「シリーズ:クマの保護管理を考える(2)大量出没にどう対応するか」/ワイルドライフ・フォーラム2021,25(2) 草刈秀紀

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 今年のブナは東北では大凶作で、豊凶指数は0.06(5県平均:東北森林管理局)。凶作年といわれた2010年の0.48、2014年の0.44、2016年の0.14、2019年の0.24より低く、過去最悪の数値になっている。人身被害もこれまでで最もひどく、環境省によると18道府県で180人(10月末現在)に増えた。死者は5人となった。