それにしても、クマに襲われた人やご親族たちの辛い思いはいかばかりだろうか。

 居住するエリアにまで侵入してくる恐ろしい獣と、いったいどう対峙すればよいのか。丹精こめてつくり上げた収穫物を一度ならず、二度、三度と根こそぎ荒らされた人たちは耕作を諦めてしまう。

フランスでも都市住民から「クマを撃つなんて」と非難囂々

 日本とはクマの密度がまるで違うが、海外でもヒトとクマの対立はある。

 2004年、フランスではピレネー山岳地帯に暮らす人たちの生活域にヒグマが現れた。当事者は“正当防衛で射殺した”と主張したが、パリに住む都市派からは、“かわいそうだ、撃つべきではなかった”と大いに叩かれた。

 2021年には、フランス南西部のスペイン国境に近いアリエージュ県で、70歳の猟師がヒグマに遭遇して襲われ重傷を負い、高山憲兵隊によって助けられた*2。ヒグマの死骸が近くにあったというが、この猟師がクマを撃ったかどうかについては明確に報道されていない。憲兵隊の広報は報道を控えたとみられる。報道していたら、北海道釧路町の「OSO(オソ)18」のケース(2023.8)のような騒ぎになっていたかもしれない。

*2 CNN 2021.11.22「70歳猟師、ヒグマに遭遇して重傷 フランス」