マダニが媒介する人獣共通感染症「ライム病」マダニが媒介する人獣共通感染症「ライム病」(写真:AP/アフロ)

(篠原 拓也:ニッセイ基礎研究所主席研究員)

*編集部注/2枚目以降にダニや蚊の拡大写真があります。閲覧時にはご注意ください。

今年の夏は酷暑が続いた。徐々に深刻化する地球温暖化の影響もあって、連日厳しい暑さに見舞われた。全国各地で熱中症の患者が出て、救急搬送が頻発した。

 酷暑に苦しんだのは人間だけではない。今年は、ペットの犬や猫が熱中症になるというケースも多発したという。動物園でも、さまざまな動物が暑さでぐったりしているというニュースが見られた。

 そして、いろいろな病気をもたらすダニや蚊にとっても、今年の夏は暑すぎて活動が停滞するという“珍現象”がみられたようだ。

 秋になり、ようやく気温が下がってきたところで、これらの虫の活動が本格化しているという。どんなことが起きているのか、少しみていこう。

夏から秋に移りつつある「ダニアレルギーの季節」

 まず、ダニについて。ダニは、大きくは家屋などに生息する“屋内塵性ダニ類”と、屋外にいるマダニ等に分かれる。屋内塵性ダニ類として、ヒョウヒダニ類、コナダニ類、ツメダニ類、イエダニが挙げられる。

 このうち、7~9割を占めるというヒョウヒダニは、人間の表皮が剥がれ落ちたものを好んで食べるダニで、ダニアレルギーの原因となる。ダニの体、死骸、フンが人間にくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目や肌のかゆみなどのアレルギーを引き起こさせる。

ヤケヒョウヒダニ(写真:Science Source/アフロ)

 このダニの体長は、約0.3~0.4mm程度と小さく、ほこりや人間のフケ・アカ、食品クズなどの中に大量に生息するといわれる。そして、極小の死骸やフンなどが「ハウスダスト」となって、空気中に浮遊し、健康被害をもたらすわけだ*1

 問題は、ヒョウヒダニが温度20~30度、湿度60~80%の高温多湿を好むとされている点だ。近年、夏場は30度を超える日が続くため活動が鈍るが、秋になり気温が20度台に落ち着いてきたところで、活発に活動するようになる。

 つまり、地球温暖化の影響で、ダニアレルギーの季節は夏から秋に移りつつあるということになる。ダニアレルギーは、これからが要注意の季節と言えそうだ。