地球外生命の存在にかかわる探査、研究が着々と進められている。地球外生命と言っても、現在のターゲットはヒト型の知的生命ではなく、小さな微生物だ。その存在を確かめるため、これまでいくつもの探査機が地球以外の太陽系惑星や衛星、小惑星に送り込まれてきた。
これまでの地球外生命探査はいかにして行われてきたのか、そこから何が得られたのか。地球外生命が見つかる可能性はあるのか──。『生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか』(講談社)を上梓した小林憲正氏(横浜国立大学名誉教授)に、アストロバイオロジー(宇宙生物学)の現状を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)
──地球以外の太陽系の惑星やそれらの衛星、小惑星の中で生命が存在する、ないしは存在していた可能性があるものとして、どういった星が考えられますか。
小林憲正氏(以下、小林):有名どころとしては、やはり火星が挙げられます。
1898年に英国人作家のH. G. ウェルズが発表した『宇宙戦争』というSF小説には、初めてタコのような形状をした火星人が描かれました。これが、「火星人」のイメージとして後世に定着しました。
もちろん、現代で火星にタコ型火星人がいると信じている人は、多くはないでしょう。
現時点では、火星に知的生命がいる、ないしは、いた痕跡は見つかっていません。昨今では、微生物レベルの生命であれば火星に存在していてもおかしくはないだろうと考えられています。
地球上で生命が誕生したのは約40億年前。当時の火星には、地球と非常に近い環境がありました。海があり、大気があったのです。つまり、地球生命誕生と同じ時期に、火星で生命が誕生した可能性があると考えても、何の問題もないのです。
ただ、火星の海は、30億年前くらいまでに消失しました。地球では、主に海の中で生命進化が進んでいったと考えられていますので、海を失った火星で同様のことが起こったとは考えにくい。
そういう理由から、現在の火星探査は、進化が進んでいない古典的な生命、ないしはその痕跡に軸が置かれています。
──これまでの火星探査の歴史や、今後の探査計画について教えてください。