金星の上空50kmは「ちょうどいい」温度
小林:金星には、硫酸が液滴として存在していることがわかっています。金星は太陽に近い位置にあるため、地表の温度は約460℃に達します。
先ほど、火星は表面温度が低すぎるため、地下の暖かいところに生命が存在しているのではないかというESAの説をお話ししました。
一方、金星は地表部も地下も暑すぎます。生命が存在しているとはとても思えません。そこで、逆に上空の低温の大気に注目してみると、高度50km程度の金星の大気は、私たちにとって「ちょうどいい」温度です。
しかも、金星には高度50kmのあたりに雲があることが知られています。その雲の正体こそ、硫酸の液滴です。地球生命の多くは、硫酸をかけられたらひとたまりもありません。でも、硫酸や塩酸、過塩素酸のような強い酸を好む地球生命がいることも事実です。
硫酸の液滴がある金星の上空に生命がいるのではないかという議論が今、脚光を浴びています。
──アストロバイオロジーの研究の過程で、ウイルスのような地球外生命が地球に持ち込まれ、人に感染する可能性はありますか。
小林:人類をはじめとする地球生命のほとんどがタンパク質を触媒として代謝を行い、DNAを用いて複製をするという生命システムを採用しています。
地球生命に対して感染力のあるウイルスは、地球生命と同じ生命システムを有していなければなりません。地球生命とは全く異なるタイプの生命システムを持つような地球外生命であれば、地球生命に感染し、滅亡させることはまずないでしょう。
けれども、ここで「パンスペルミア説」を考えると、恐ろしい予測が導き出されます。