生命の存在が最も期待されている木星の衛星
小林:現在の火星表面は到底、生命が住めるようなものではありません。ESAは、地下に生命がいる可能性があるとして地下2メートルの深さまで掘れる探査機ロザリンド・フランクリン・ローバーの準備を進めています。
ロザリンド・フランクリン・ローバーは、NASAの協力のもと、2028年に打ち上げられる予定です。
──火星以外で、生命が存在する可能性がある星はありますか。
小林:もちろん、あります。「液体の水」の有無は、生命存在のための重要なファクターとして考えられています。そこでまず、地球から近くて水が過去にあった痕跡のある火星探査がスタートしました。
火星探査が始まった当時の常識として、気候として地球と同様、暑くもなく寒くもないところに位置しなければ、星に液体の水は存在することはできない、と思われていました。
ところが、1977年にNASAが太陽系の外惑星および太陽系外の無人探査機として打ち上げたボイジャー1号と2号は、木星や土星の衛星に水の痕跡を見つけました。
いずれの惑星も太陽からはるか遠く離れているため、表面温度は非常に低く、表面にある水は当然凍っています。しかし、どうやらその氷の下に液体の水が存在しているようなのです。氷の下の液体の水の中に、ひょっとしたら生命が存在しているかもしれない、と多くの研究者が考えています。
現時点で最も期待されているのは、木星の衛星エウロパ、土星の衛星エンケラドスです。ほかにも、木星の衛星のガニメデやカリスト、土星の衛星タイタン、ミマス、さらには小惑星帯にあるケレス、今は準惑星に格下げになってしまった冥王星です。
今挙げた星は、表面に氷が存在していますが、その下に液体の水がある可能性が高いと考えられています。こうして、生命の存在が期待される星の数は、劇的に増加しました。
──タイタンに関しては液体の水ではなく液体メタンと液体エタンの混合液の湖がある、と書籍に書かれていました。