3月5日、全国人民代表大会での習近平主席(写真:新華社/アフロ)
ごく当たり前のことなのだが、中国がようやくいまになって気づいたという感じだった。それは、大国をつつがなく治めるには、持続的な経済成長が不可欠で、持続的な経済成長のためには、何より民営企業の活発な活動が大事だということだ。
「国民の代表」から「習近平の部下」へ
中国時間の3月5日午前9時(日本時間午前10時)から、年に一度の国会にあたる全国人民代表大会が始まった。日本では「全人代」(ぜんじんだい)と訳しているが、これは1964年(昭和39年)に「日中記者交換協定」を結んだ後、北京に派遣された日本人記者の誰かが勝手に付けた略称だ。中国では「人大」(レンダー)と略すので、日本でも早く「人大」(じんだい)と直した方がよい。そのため、以下は「人大」と記す。
中国全国人民代表大会の壮観な光景(写真:新華社/アフロ)
ともあれ、会期は昨年に続き、わずか7日間で終わる(11日閉幕)。しかも年に一度の国会というのに、審議する法案は「中華人民共和国全国人民代表大会及び地方各級人民代表大会代表法修正草案」という、「人大代表」が自分の首を絞めるような法律だけなのだ。
1992年に定めた全52条からなるこの法律は、日本で言えば国会法のようなもので、「人大代表」のあり方や仕事内容を定めている。それを34条分も変更しようというのだ。
特に、第2条で「全国人民代表大会と地方各級人民代表大会の代表は、人民の利益と意志を代表し、憲法と法律が付与する各級人民代表大会の各項目の職権に基づき、国家権力に参加し、公使する」と明記されている。中国の「国会議員」なのだから、中国国民の利益と意志を代表するのは当然だと思う。
ところが改正後は、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想の指導を仰ぎ、堅忍不抜の中国の特色ある社会主義政治の発展の道を歩み、民主集中制の原則を遵守する」となる。つまり、「国民の代表」→「習近平の部下」という大転換である。



