6人は2人ずつ、3回に分けて立つが、特に重要なのが最初に出てくる2人である。ある年は宇宙飛行士だったり、別の年は中国共産党の歴史記念館の案内係だったりした。
それで、今年は? 中国を代表するスマホメーカーの一つ、小米(シャオミ)の創業者・雷軍(らい・ぐん)CEO(55歳)と、中国を代表する家電メーカーの一つ、海爾(ハイアール)の周雲傑(しゅう・うんけつ)CEO(58歳)だった。
つまり、今年の「人大」で習近平政権がアピールしたいのは、「民営企業」というわけだ。両CEOはそれぞれ、次のように述べた。
「人大」で民営企業の実績をアピールする経営者
雷軍CEO 「創業して15年、まさにメイド・イン・チャイナの『加速度』を体現してきた。だが小米の成長は、科学技術のイノベーション、および北京のこの『肥沃な土地』の支持と切り離せない。

小米は過去5年の累計で、1050億元(約2兆1600億円)を超える研究開発費を投じてきた。基盤となる核心技術の攻略に集中し、スマートフォン、スマートホーム、NEV(電気自動車・プラグインハイブリッド車・燃料電池車)などの分野をカバーしてきた。
スマートフォン分野で小米は、18四半期連続で世界トップ3に入る安定ぶりで、そのスマートホームIoT(モノのインターネット)プラットフォームは9億台以上のデバイスに接続され、世界最大の消費者向けIoTエコシステムとなっている。自動車分野では、昨年3月に『小米SU7』を発表後、わずか9カ月で13.5万台を消費者に届け、NEV市場の象徴となる製品となった……」
周雲傑CEO 「ハイアールは、山東の肥沃な土地で成長してきた企業で、私は1988年に大学を卒業してハイアールに入社し、ハイアールの世界進出の過程をすべて見てきた。要は、堅守、イノベーション、ダブルウインという3つのキーワードだ。

堅守とは、中国人が自己の世界的ブランドを創出していくということだ。ハイアールは1991年に輸出を始めて、2016年になって海外市場で利益を確保した。25年も世界化の道を堅持し続けたのだ。
イノベーションとは、科学技術のイノベーションは、あるブランドが世界で立ち上がっていけるかというカギとなるポイントだということだ。ハイアールは100以上の国際標準を率先して作り、世界中の家電製品の科学技術のイノベーションを牽引した。いまや家電の特許の7割は中国から出ている。
ダブルウインとは、情報化、デジタル化の波に直面して、ハイアールは先端化、スマート化、グリーン化に転換し、現地の文化に溶け込んでエコロジーのダブルウインを実現したことだ。その結果、ハイアールの海外業務は53%に上り、中国のハイアールブランドは、ますます海外の消費者に喜ばれている……」
何だか両CEOとも、「公の場」を使って、自社のアピールをしているようではないか。それでよいのか?
よいのである。なぜなら、どんな巨大な民営企業も事実上、中国共産党の強い影響下にあるので、自社の自慢は共産党政権の自賛でもあるからだ。