実はこれと同じことが、昨年の「人大」で行われた。昨年の「人大」で唯一可決成立させた国務院組織法の改正がそれで、国務院(中央官庁)が党中央(習近平総書記)の下部組織のように組み替えられた。
今度は、「人大」(国会)を同様に組み替えようということだ。「中華人民共和国全国人民代表大会は最高の国家権力機関である」と謳(うた)っている中国憲法第57条が哀しい。
「国会議員」の仕事は年に7日のみ
そもそも、「国会議員」が年に7日間しか仕事しないとは、日本からすれば驚きだ。「一年を二十日で暮らすよい男」と言われた江戸時代のお相撲さん以上である。
「人大」の会期は、習近平政権になって短くなる一方だが、毎年の3月5日に始まることだけは変わらない。旧暦を使う中国では、年ごとに日付が変わる春節(旧正月)が、2月19日まで延びることがある。多くの中国人が春節から2週間は「正月気分」だから、全国人民代表大会の開幕を、春節が最も延びた年でも「正月明け」となる3月5日に設定したのだ。
「中国ウォッチャー」として、もう少し「人大トリビア」を披歴すると、「人大」が「始まる」のは、正確に言えば中国時間の3月5日午前9時でなく、午前8時である。全体会議の会場である人民大会堂内の万人大会堂(周恩来首相が命名した)脇のスペースで、「代表通道」が行われるのだ。
「代表通道」とは、計2929人の代表(この日の参加は2880人)のうち、習近平政権がその年にアピールしたい人々をピックアップ。記者団の前に立たせて、中国メディアの記者が、いかにも事前打ち合わせをしたような質問を、代表1人に一つずつするのだ。この日の朝は、計6人の代表が選ばれた。