在留外国人を巡る議論には間違いも多いという(写真:ロイター/アフロ)
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 高市政権は11月27日に「秩序ある共生社会」と題した外国人政策に関する有識者会議の初会合を開いた。この会合は来年1月に取りまとめる外国人総合的対応策に反映される。主なテーマには、出入国・在留管理の厳格化も含まれているが、議論すべき本当の論点はどこにあるのか。『外国人急増、日本はどうなる?』(PHP研究所)を上梓した雇用ジャーナリストで大正大学表現学部客員教授の海老原嗣生氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──外国人問題を議論する場合、不法滞在者と正規に在留している外国人を一緒にするなど乱暴な議論になりがちで、不法移民を国政選挙のメインテーマにすることにはそもそも違和感があると書かれています。

海老原嗣生氏(以下、海老原):「不法移民」という呼び方が、誤解を生んでいると思います。日本にいるのは「不法移民」ではなく「不法滞在者」です。

 島国である日本には、国境を勝手に越えて入ってくる欧米のような不法移民はほとんどいません。入ってくる段階でパスポートコントロールを受けているので、滞在期間が切れて不法滞在者になったとしても、誰がいつ入ってきたかすべて名簿になっています。

 漁船などに紛れ込んで入ってくる不法入国者が全くいないかというと、年間150人程度(2024年は168人)とわずかにはいますが、その多くは逮捕されています。全体では、観光客や就労者、留学生を含めた外国人入国者数は年間およそ4000万人(2024年は4034万人)です。

 欧米の置かれている恐ろしい状況は、いつの間にか不法移民が国境を越えて入り、それが誰でどこに勤めているのかも分からないということですが、日本における不法滞在者が、そうした欧米の不法移民と同じだと勘違いしている人が少なからずいます。

 私がこうしたテーマの討論会に参加すると、日本には船で密入国した不法移民がたくさんいて、それが移民問題の重大テーマだと思い込んでいる聴衆に出会いますから。

──ビザを取得して入ってきている人たちには、滞在期限切れ以外の問題はないのですか?

海老原:これまで日本のビザには抜け穴がありました。ただ、遅ればせながらも日本政府はかなり正しく抜け穴をふさぐ努力をしています。

 たとえば、問題になったものに経営者ビザがあります。500万円の資本金といくつかの条件を満たせば、経営者としてビザを取得して日本に移住できるというビザです。経営者になって、母国の人たちを就労ビザで日本に呼び寄せることも可能でした。ただ、日本政府は経営管理ビザの資本金の額を500万円から3000万円に引き上げるなどして要件を厳格化しました。

 また、観光ビザで入ってきて、そのまま滞在期間を過ぎても居残る人もいますが、こうした人たちに対しては、ビザなしで来られる国の数を減らすなどの対応がなされています。

 日本政府が今、最も条件を厳格化しなければならないと私が思うのは、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格(技人国ビザ)です。このビザを持つ人たちは大きく2種類に分かれます。