「技人国ビザ」で働く外国人派遣社員の問題

海老原:1つは、日本に留学できて、日本の大学などを卒業した後に日本の企業に勤める人たちです。この人たちは日本語学校に行き、日本の大学に行き、その後も日本が好きで日本で仕事を見つけて生活している人たちなので問題はないと思います。5年以上働けば永住権も取れます。

 ところが、技人国ビザには異なるタイプの人たちもいます。たとえば、自分の母国で大学を卒業し、日本の仕事先を見つけて就労ビザを取って日本に入ってくる人たちです。日本の大学を出ていないのに就労ビザが取れてしまう。ここは審査が甘すぎると私は思います。

 何より私が問題だと思うのは、母国で大学を卒業し、日本で働きたいと思っている外国人を日本の派遣会社が外国人の派遣社員にしていることです。こうした技人国ビザを持つ派遣社員が日本には約39万9000人もいます。

 日本で働いている外国人はおよそ230万人ですから、およそ6人に1人が派遣社員ということになります。彼らは技人国ビザを持っているので、本来、ホワイトカラーの仕事に就かなければおかしい。でも、実際には審査が甘く、ブルーカラー系の仕事に就くこともあります。しかも、この人たちは日本で教育を受けていません。

 日本企業が人件費の安い外国人を雇いたがるので、派遣会社が海外にいる日本に住みたい人を見つけて声をかけているのです。

 私のクライアントのところにも技人国ビザを持つ派遣社員が相当数見られます。飲食業、製造業、建設業、いずれも人手不足ですから、このような人材に頼りたいのはわかります。ただ、技人国ビザを持つ派遣社員が10年日本で働けば、職種に関係なく日本の永住権が取れてしまう。ここは早急に対策を立てるべきです。

──「不当に安い給料で外国人が流入すると日本人の賃金が下がる」という認識は間違っていると書かれています。

海老原:アメリカなどは典型ですが、「プッシュアップ効果」と呼ばれる現象があります。

 不法移民の人たちが安価に重労働を担うと、その国の労働者は1ランク上の仕事に就くことができます。アメリカではエッセンシャルワーカーの仕事が一番大変で給料が安い。その部分を不法移民が担っているということです。

 実は、トランプ大統領を支持している「MAGA」の多くは、そうしたエッセンシャルワーカーのその1ランク上の仕事に就いている人が少なくありません。この層は給料はそう悪くないし、労働組合も強く、プッシュアップ効果でむしろMAGAの人たちの収入は上がっている。こういうことはよく労働経済で語られることです。

 それに対して日本の場合は、外国人の多くが就労か留学で来ているため、不法入国者がほとんどいません。