北アフリカにあるスペインの飛び地、メリリャの国境フェンスを越えようとするアフリカ移民(写真:ロイター/アフロ)
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 1月14日、小野田紀美・外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣は「外国人との秩序ある共生社会の実現のための有識者会議意見書」を受け取った。意見書の議事録には、2025年5月に発表された「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を着実に進める目標も記されている。日本の外国人政策は正しい方向に向かっているのか。『移民/難民の法哲学 ナショナリズムに向き合う』(白水社)を上梓した静岡大学学術院人文社会科学領域教授の横濱竜也氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──出稼ぎ労働者の権利をめぐる議論を通して、オーストリアの政治学者、ライナー・バオベックの「ステークホルダー・シティズンシップ」について解説されています。

横濱竜也氏(以下、横濱):民主社会の範囲や境界を考えるときに、国境を越えて日本に入ってくる前の人たちに、日本人と同じ権利を与えなければならないと私は考えません。一方で、一時的労働者の日本における権利をどう考えたらいいのかということは疑問に思います。

 割とこれに近い感覚の議論が最近ネットなどでも見られるようになりました。つまり、一時的労働者を受け入れると社会的包摂の問題などが出てくるので、そういう人たちに頼るのではなく、日本人がしっかり頑張って日本を支えていかなければならないという考え方です。

──もっと言うと「技能実習制度なんてやめてしまえ」という主張ですね。

横濱:ただ、人口減少の著しい日本で本当にそれは現実味があるのか考えなければなりません。

 やや問題含みの表現ではありますが、入国して働きたい移民の圧力を「プッシュ」と呼び、移民を雇いたい雇用側の需要などを「プル」と呼びます。人口減少はプル要因です。円が相対的に弱くなる中で、次第に数が減っていく可能性もありますが、日本に来ようとするプッシュは一定の大きさで存在します。

 日本にこれから来る人たちは、すべてではないにしろ、一部は「ステークホルダー」になっていきます。つまり、働いて税金や社会保険料を払う人たちになる。この人たちを「あなたたちは外国人だから出ていきなさい」とただ排除していいのかというと、私は疑問に思います。

 もう一つは、難民の庇護申請をする人たちをどう考えるかです。彼らは自分の国に帰りたくない、帰れない、日本にいたい、日本で働きたい。そのため、考えられる対応の一つは、庇護申請をしている人たちを追い出そうとするのではなく、一時的な労働者という扱いにするというものです。

──欧州では、中東や東南アジアからの難民の受け入れに疲弊して、移民・難民政策が保守化している印象もあります。