2016年7月に起きた相模原障害者施設殺傷事件の現場(写真:AP/アフロ)
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 相模原障害者施設殺傷事件の植松聖、附属池田小児童殺傷事件の宅間守、首都圏連続不審死事件の木嶋佳苗、オウム真理教元幹部の新実智光など、凶悪犯罪を起こした死刑囚たちと獄中結婚する人たちがいる。なぜ、どんな思いで死刑執行を控えた人と結婚するのか。『死刑囚と家族になるということ』(創出版)を上梓した月刊『創』(つくる)編集長の篠田博之氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──死刑囚と獄中結婚した方々の声を、手記やインタビューなどの形式で紹介されています。

篠田博之氏(以下、篠田):自分で言うのもなんですが、これはなかなかすごい本です。今回は死刑囚と獄中結婚した当事者たちの生の声を届けることを目的にして、手記やインタビューを中心にまとめました。

 死刑囚と獄中結婚する人たちがいる。そう言われても、多くの人はピンとこないと思います。死刑囚に関することは本当に知られていませんから。

──この本を読んで、これほど多くの死刑囚が獄中結婚しているのかと驚きました。なぜこれほど死刑囚と結婚する人が多いのですか?

篠田:裁判を経て死刑が確定すると、弁護人と家族以外とは拘置所(死刑囚が収監されるのは刑務所ではなく拘置所)で接見禁止になります。死刑囚が世間から隔絶されるのですが、そのことに恐怖を感じる死刑囚は少なくありません。

 支援する側の人間も接見ができなくなるため、どうしても接見したいと思えば、究極の選択として家族になるしかありません。これが獄中結婚に踏み切る一つの理由です。その上で、恋愛感情があったり、なかったり、それぞれ個別に異なる理由があります。

──相模原障害者施設殺傷事件で知られる植松聖と結婚した植松翼さんが「なぜ植松に思いを馳せるようになったのかなど内面はそう単純ではない」と書かれています。

篠田:植松死刑囚は翼さんと2024年12月に結婚しました。最近の話題なので、この本でも大きく取り上げました。分かっている部分だけを取り出して書きましたが、翼さん本人もまだ自分の気持ちの整理がついていない面があると思います。

 翼さんは恋愛感情を持っており、毎日のように植松死刑囚と接見していますが、この恋愛感情がどのようなものなのか説明しようとすると、なかなか難しい。

 彼女は昔、知的障害を持った男性から性被害を受け、それがずっとトラウマになって記憶障害などに悩まされてきました。そこから植松に関心を持ったようで、彼の死刑が確定した後、差し入れなどをずっとしていました。その中で、どうしても会いたいと思い詰めたたようです。

 本人は恋愛感情と考えていますが、一般的な感覚でいえば、ちょっと理解が難しいですよね。ともあれ「植松に会いたい」と彼女は最初、私に相談してきました。

 死刑囚ですから、会うためには家族になるしかない。結婚するしかありません。それを説明して、そういう覚悟があるのかと問うと、彼女は結婚すると言い、親が猛反対したので家を飛び出してしまいました。

 私は彼女に「もし障がい者への差別意識から植松に共鳴しているのであれば協力できない」と言いました。彼女と二度会って話を聞いて、差別意識への共鳴ではないと感じたので獄中結婚の手続きを仲介したのです。

 実は、植松が死刑囚になってから、10人ほどの女性が彼に差し入れをしていたようです。その中には、彼の障がい者差別思想に共鳴している人もいたようです。

──植松のファンのような女性が10人も差し入れをしていたのですか?