オウム真理教の幹部と獄中結婚した女性たち
篠田:当初はそうでしたね。死刑囚になると接見禁止になりますが、差し入れは可能です。物だけではなく、お金を送ると本人から直筆のお礼状が届く。お金を送る側にとっては自筆の礼状は大きなことですから、定期的に差し入れを送る人がいるのです。
翼さんもその1人でしたが、そこからさらに一歩前に進みたいと考えました。彼女が結婚したことが報じられて以降、他の女性たちからの差し入れはパタッとなくなったらしく、植松死刑囚はそれを嘆いていたようです。
──オウム真理教の幹部で、2018年7月に死刑が執行された新実智光と獄中結婚した由紀さんのやり取りも紹介されています。
篠田:由紀さんはオウムの後継団体であるアレフの元信者ですから、新実智光に対する恋愛感情は信仰心と結び付いていると思います。新実はオウムの上位幹部でしたから、信仰の上で憧れの人であるという気持ちと恋愛感情がない交ぜになっていたのでしょう。由紀さんは今でも新実の遺骨を自分の部屋に置いています。
──由紀さんは「夫は最後まで後悔や反省はしていなかったけれど、(麻原への)信仰心は捨てたとも言っていた」と語っています。この発言は、よく考えると奇妙でどこか意味深に感じます。
篠田:こうした言葉はオウム事件を解明するにはとても重要です。オウム事件は、裁判を経て一定の事実関係が明らかにされましたが、事件の核心にはまだ大いに謎が残されています。
特に新実は最も麻原に心酔していたと言われた幹部ですが、その彼が死を前にして何を考え、何を語っていたかというのは獄中結婚した妻以外からは聞くことが難しい。
サリンを製造したとされる土谷正実死刑囚は獄中結婚した妻に、自分は麻原に騙されていたのかと尋ねるなど、妻とのやりとりはとても重要な意味を持っていました。この妻はオウムとは何の関係もなく、土谷が塾の講師のバイトをしていた時の教え子でした。
新実は自分が命をかけてしたことを「後悔している」と言えない気持ちがあったのでしょう。それは自己否定になってしまう。
オウムの信者たちは、世直しのような意識で一連の事件を起こしました。そうした思いや信仰自体は否定しないけれど、麻原彰晃に対しては「利用された」という思いを最終的には抱えていた。特に土谷はそうだったと思われます。
──池田小学校事件の宅間守と結婚したAさんの言葉が紹介されています。Aさんはなぜこれほど反抗的な人物に好意を持ったのだと想像されますか?