不法移民を選別して受け入れるスペイン

横濱:欧州では、難民条約上の難民の定義を超えて、難民に近い立場の人々を保護してきた歴史があります。たとえば難民保護の枠の外に「補完的保護」といった枠組みを設けてきました。難民条約は政治的迫害から逃げてきた人たちを対象にしていたために、国が戦争しているなどの状況から逃げてきた人は対象外になってしまうからです。

 日本も最近は、入管法改正でこの補完的保護の規定を設けました。ウクライナからの避難民についても、補完的保護とはまた別の「一時的保護」という形で一定数受け入れており、保護の範囲を少しずつ広げています。

 その根底には生存のための権利を尊重しようとする考えもあると思います。追い返したら死んでしまう可能性が高い人に、帰ってくださいとは言えません。

 ただ、受け入れた後どうなるのか。欧州の国々が難民の受け入れを絞り始めているのは対応に疲弊しているからです。思った以上に難民や移民の社会統合が難しいという現実に直面しているのです。統合政策は時間もかかります。人が移ってきて生活を作り根付いていくためには、数世代にわたって実現していかなければなりません。

 一方で、難民はただ保護されているだけではなくて、労働力として期待される側面もあります。「難民の移民化」という言い方もあります。そうした動きを見せている最も顕著な例がスペインです。

──スペインは、欧州の移民・難民政策で数少ない成功例として注目されていますね。

横濱:スペインにはメリリャやセウタなどの飛び地があります。そこの国境線のフェンスを越えて入ってくる人たちがいますが、スペインは他国に比べれば、そうした人々を受け入れています。語学などを含む訓練をすることでなじめそうな人は、一定の基準で受け入れているのです。

 ある意味では不法移民ですが、追い返すと生存が危うくなる恐れもあるため、労働力になることを条件に受け入れているわけです。

 こうしたスペインの取り組みをどう評価したらいいのか、難しい部分もあります。不法移民ですから全部追い返せば筋は通ります。また、受け入れ可能な人を受け入れるのは良心的に思えますが、その際には労働力として使えるかどうかという判断で選別している。選んでもらえなかった人たちはどうなるのかという疑問も残ります。

 今、多くの国で難民受け入れに対するバックラッシュが起きていますが、あらゆる種類の階層の人たちをひっくるめて難民として保護し受け入れるのはつらいという本音があるように思います。

 そこで「労働力として使えるかどうか」という選別の理論が生まれ、スペインはまさに選別しています。もちろん、全員追い返すよりマシとも言えますが、悩ましいですよね。