「憂鬱にされる側」と「する側」は実は紙一重だという(写真:PantherMedia/イメージマート)
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「あの人がいるから職場に行きたくない」。仕事のストレスの原因は多くの場合、人間関係だ。約1万人の相談に向き合ってきた舟木彩乃氏(心理学者)は、「誰かに憂鬱にされている」と訴える人もまた、「誰かを憂鬱にする側」になっている可能性もあると指摘する。『あなたの職場を憂鬱にする人たち』(集英社インターナショナル)を上梓した舟木氏に、「憂鬱の源泉」とその乗り越え方について聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)

誰もが憂鬱にする側になりうる

──舟木さんはこれまでカウンセラーとして約1万人の相談に対応してきました。時にはカウンセラーのことも憂鬱にする人たちがカウンセリングに来ることもあると思います。彼らに共通する点がありましたら、教えてください。

舟木彩乃氏(以下、舟木):彼らはまわりが見えていないことが多く、「自分は正しい」と思い込む傾向が強いという点があります。そのため、実は対人トラブルの原因が彼ら自身であることも多いと考えられますが、これを自覚できません。

──「憂鬱にされる側」ではなく「憂鬱にする側」になっているのですね。

舟木:はい。彼らは「自分がどれだけ憂鬱にされているか」を訴え、自分がどれだけ正しいかを主張し、カウンセラーに同調を求めます。ただ、彼らの話を聞いていくと、本人の言い分もある程度わかるものの、独特な考え方をするケースも少なくありません。そのため、彼ら自身が周囲を憂鬱にさせているケースもあるだろうと推察できます。

──書籍では「あなたにとって憂鬱な人が、必ずしも組織や他の社員にとって憂鬱な人とは限らない」と書かれています。

舟木:本の冒頭で「あなたの職場に、『この人さえいなければ……』という人はいないでしょうか?」と問いかけました。おそらく、「いる、いる」と思った方が多いと思います。

 本のタイトルからこの本を、被害者の視点から「加害者を分析するための本」と思った方が多いのではないでしょうか。もちろん、本書にはそのような視点からの分析も多く含まれています。

 でも、私は加害者と被害者を分ける境界線自体が極めて主観的で不安定だということを前提として本書を書きました。憂鬱にされる側だけではなく、憂鬱にする側の人たちの心理的背景やメカニズムについても解説し、いろいろな視点から考えるきっかけとなる構成にしました。

 そのような視点で読み進めると、「自分も人を憂鬱にしていることがあるのではないか」と思い当たることが出てくるかもしれません。

──「コミュニケーションの目的は、お互いの『準拠枠』の違いを確かめ合うこと」とありました。これはどういう意味でしょうか?