非主張型は既読スルーをどう捉えるのか?
──一方で、アサーティブなコミュニケーションをしようとしても「ネガティブな結果を想像して不安に支配されてしまうケースが多い」とも書かれていました。これは、どのようなことでしょうか。
舟木:これは、非主張型の方に典型的な事例です。アサーティブ型の表現ができない背景には、低い自己肯定感が原因の場合もあります。
例えば、友だちにLINEを送ったのに既読スルーされたとします。客観的な事実は「LINEが既読になった」です。でも、非主張型で自己肯定感の低い人は、既読スルーされた原因を「嫌われているからではないか」「軽く見られているからではないか」という思考がパッと思い浮かんでしまう。このように、自動的に思い浮かぶイメージを「自動思考」と呼びます。
ネガティブな自動思考が思い浮かぶ人は、そのような思考の癖が固着してしまっているのです。これが世間一般でいう「性格」と呼ばれるものとも言えます。
──ネガティブな自動思考を客観的事実に沿ったものに修正していくには、どうしたらよいのでしょうか。
舟木:自分の思考の癖に気付くことが大切です。LINEで既読スルーされたとき、「嫌われている」「軽く見られている」という自動思考が頭に浮かぶとします。まずは、そのような思考パターンに気付き「自分はこういう考え方の癖があるんだな」と認識することが第一歩です。
次に、ネガティブな自動思考が思い浮かんだ場合、それが「認知の歪み」によるものである可能性を意識し、「他の考え方・捉え方はないだろうか」と考えてみることが重要です。
そうすると、「忙しくて返信できなかったのかもしれない」「急用ができたからかもしれない」など別の可能性が思い浮び、感情が落ち着いてくると思います。これにより、どの認知が客観的な事実に近いかを冷静に考えることができます。
このように自身の思考のクセに気づき、思考を修正していくことで、健全な自己肯定感を得ることができると思います。
憂鬱な職場にいる人に贈る言葉
──職場で憂鬱になっている人たち、もしくは職場で人を憂鬱にしているかもしれないと思っている人たちにメッセージをお願いします。
舟木:自分が憂鬱にされていると感じて苦しい状況にあるとき、首尾一貫感覚の3つ目の「有意味感」を意識してほしいと思います。この状況に真摯に向き合う意味はあるのか。今、この場所にいることにどのような価値があるか。これらを意識することで取るべき行動が見えてくることがあります。

また、自分の常識や価値観は、相手にとっての常識とは限らないことを常に意識することも重要です。相手にとっては、あなたの価値観が非常識に思えることもあります。これは正義や善悪の問題ではなく、準拠枠の違いにすぎません。誰が正しいかではなく、「違いがある」という前提でコミュニケーションをすることが、憂鬱を遠ざける手段の一つです。
最後に、私たちは誰もがいつ「憂鬱にされる側」にも「憂鬱にする側」にも回りうるということを忘れないことが大切だと思います。その自覚こそが、職場をより健全にし、しんどさを減らす第一歩になるのではないでしょうか。
舟木 彩乃(ふなき・あやの)
心理学者
筑波大学大学院博士課程修了(ヒューマン・ケア科学博士)。博士論文の研究テーマは「国会議員秘書のストレスに関する研究」/筑波大学大学院ヒューマン・ケア科学専攻長賞受賞。メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー)副社長。官公庁カウンセラーでもあり、中央官庁や自治体での研修・講演実績多数。
関 瑶子(せき・ようこ)
早稲田大学大学院創造理工学研究科修士課程修了。素材メーカーの研究開発部門・営業企画部門、市場調査会社、外資系コンサルティング会社を経て独立。YouTubeチャンネル「著者が語る」の運営に参画中。