超巨大火山の噴火は地球上の生物に壊滅的な打撃を与える(写真:AP/アフロ)
目次

 地球規模の大量絶滅は、突如として空から飛来した隕石だけが引き起こすものではない。最新研究によれば、地球上の生物が壊滅的な打撃を受けた5回の大量絶滅のうち、主因が隕石であるのは1回だけ。残り4回は超巨大火山の噴火によるものだという。

 超巨大火山の噴火はいかにして大量絶滅を引き起こすのか、過去に地球で起こった大量絶滅はどのようなものだったのか。『超巨大噴火と生命進化 地球規模の環境変動が大量絶滅と進化をもたらした』(講談社)を上梓した、佐野貴司氏(国立科学博物館理学研究部長)に話を聞いた。

──大量絶滅の原因というと、隕石の衝突というイメージがありますが、本書を読むと、むしろそれは例外的な事例であるということが分かります。大量絶滅の主な要因としてどのようなものがあるのでしょうか。

佐野貴司氏(以下、佐野):地球の生命は、これまで5回の大量絶滅を経験してきたと言われています。これらを「ビッグ・ファイブ」と呼びます。

 有名なものとして、地球上から恐竜が姿を消した、直近の約6600万年前の白亜紀末の大量絶滅が挙げられるでしょう。原因は隕石の衝突です。そのため、「大量絶滅=隕石の衝突」というイメージが世間に強くあるのだと思います。

 しかし、ビッグ・ファイブのうち4回の大量絶滅イベントは、超巨大火山の噴火が原因だと考えられます。また、隕石の衝突が主要因と考えられている白亜紀末の大量絶滅の時期にも、超巨大火山の噴火があり、それが絶滅イベントを長引かせた可能性が示唆されています。

急激な寒冷化と長期的な温暖化

──超巨大火山の噴火は、どのようなプロセスで大量絶滅を引き起こすのでしょうか。

佐野:超巨大火山の噴火によって、地球規模でも大きな環境変動が起こります。代表的なものは、二酸化硫黄の大量発生と、二酸化炭素の放出です。

 火山の噴火により大気中にまき散らされた二酸化硫黄は、水蒸気と結びついて硫酸エアロゾルという微粒子を生成します。この硫酸エアロゾルの微粒子が成層圏に舞うと太陽光を遮断して、寒冷化を引き起こします。噴火の規模や放出された二酸化硫黄の量にもよりますが、寒冷化は数カ月から数十年ほど続くと言われています。

 一方、火山の噴火では二酸化炭素が放出されます。皆さんご存じの通り、二酸化炭素は地球温暖化を招きます。硫酸エアロゾルの寒冷化とは異なり、超巨大火山の噴火による温暖化は数十年から数十万年という長期的なものです。

 つまり、超巨大火山が噴火すると、まずは急激な寒冷化が訪れ、その後に長期的な温暖化が起こります。このような環境変動が、地球上の生物に大打撃を与えるのではないかと考えられています。

──過去の5回の大量絶滅は、それぞれどのようなものだったのでしょうか。