陸上の種の97%が絶滅したペルム紀末の絶滅イベント

──3度目の大量絶滅は地球上最大の絶滅イベントと言われているそうですね。

佐野:はい。約2億5000万年前のペルム紀末には、シベリアで超巨大火山が噴火し、地球環境変動で起こり得るすべてのものが起こりました。

 大量の火山ガスが数百万年にわたって放出され、急激な寒冷化と、その後の長期的な地球温暖化を引き起こしました。最近の研究によると、地球全体の平均気温が現在よりも10度以上高い状態が数百万年続いたそうです。

 また、火山から放出された有毒成分が酸性雨として陸海を問わず降り注いだことでオゾン層の破壊が起こり、強烈な紫外線が降り注ぎました。これにより、陸上生物の多くが絶滅に追いやられました。海洋では、無酸素化や酸性化が起こり、海洋生物に大きな打撃を与えました。

 東北大学名誉教授の海保邦夫氏によると、ペルム紀末の大量絶滅では、海域生物の種の80~86%、陸上生物の種の97%が姿を消しました。この数字からも、いかにペルム紀末の絶滅イベントが大規模なものだったか、おわかりいただけると思います。

アンモナイトと恐竜の絶滅

──古生物の代表格であるアンモナイトや恐竜はいつ絶滅したのでしょうか。

佐野:約6600万年前の白亜紀末です。これが、5回目の大量絶滅イベントです。白亜紀末の大量絶滅の前に、4回目の大量絶滅イベントについて少しお話ししたいと思います。

 4回目の大量絶滅イベントは、約2億年前の三畳紀末に、中央大西洋マグマ区の活動の活性化により起こりました。この大量絶滅の特徴は、特に海洋の酸性化による海洋生物の種の多様性の減少です。アンモナイトは一部の地域では絶滅し、爬虫類も大きく種の数を減らしました。

 そして、直近の大量絶滅イベントが、先ほどお話しした約6600万年前の白亜紀末のイベントです。ご存じの通り、このイベントの発端は直径10kmの巨大隕石の衝突です。隕石衝突により巻き上げられた岩石片は宇宙空間に放出された後、地球上の広い範囲に落下しました。岩石片落下の衝撃により、地表や大気が加熱され、陸上生物の多くが姿を消しました。

 また、隕石衝突や岩石片落下が起きると、地表に含まれていた硫酸塩が気化して大気中に放出され、水蒸気と結びついて硫酸エアロゾルを生成します。さらに、岩石片落下による極端な温暖化とそれによる乾燥化により、森林火災が発生。煤が空気中に舞い上がりました。

 硫酸エアロゾルと煤は太陽光を遮り、寒冷化を招くとともに、光合成をする植物を絶滅させます。草食動物は死滅し、草食動物を捕食していた肉食動物もまた、餓死していきます。

 硫酸エアロゾルは酸性雨となって降り注ぎ、陸上生物にも海洋生物にも打撃を与えました。