アンモナイトも絶滅寸前に陥ったデボン紀後期の大量絶滅

佐野:最も昔の大量絶滅は、約4億4500万年前から4億4400万年前まで、おおよそ100万年間続きました。これがオルドビス紀末の大量絶滅です。

 オルドビス紀末の大量絶滅では、三葉虫やサンゴ類が大打撃を受けました。これは、ビッグ・ファイブの中でも2番目に大きな絶滅です。オルドビス紀末の大量絶滅の特徴は、主に海域における絶滅に集中しているという点にあります。

 と言うのも、オルドビス紀末は、陸上に生命が進出し始めた時期です。植物の生息域が小さかったため、化石記録が少なく、陸上での絶滅の研究は進んでいないというのが現状です。

 2回目は、約3億7200万年前に起きたデボン紀後期の大量絶滅です。この時期は、超巨大火山の噴火により寒冷化が起こり、主に海域に生息する生物が大打撃を受けましたが、淡水を生息域とする生物は、それほど種数を減らすことはありませんでした。

 これは、陸上の湖水は年間の寒暖差がもともと大きいため、淡水魚はある程度の温度変化に適応できたためだと考えられます。一方、水温があまり変化しない海域に生息する生物は、海水温の変化に適応できずに絶滅していきました。

 特に浅海は、深海と比較して寒冷化によって水温が大きく低下するため、浅海を遊泳する海洋生物が多様性を減じました。無顎類(むがくるい)と呼ばれる顎を持たない脊椎動物で現生しているのは、ヤツメウナギ類とヌタウナギ類のみです。

 無顎類はカンブリア紀(約5億4200万年前~約4億8830万年前)から地球の海に生息していましたが、デボン紀後期の大量絶滅でほぼ100%が絶滅したと言われています。

 また、アンモナイト類や腕足類(※)も大きく属の数を減らし、古生代のシルル紀からデボン紀にかけて繁栄した原始的な魚類のグループである板皮類は約3億5890万年前に地球上から姿を消しました。

※2枚の殻を持つ海産の無脊椎動物で、主に底生生活を営んでいる。二枚貝と似ているが、貝ではない。