「自分も相手も大切にする」アサーティブな表現

──3つの感覚をバランスよく保つコツは?

舟木:「首尾一貫感覚」は、「この期間にこんなトレーニングをすれば来週には高めることができます」というようなものではありません。

 問題が起きたときに3つの感覚を想像して、自分に足りていないもの・必要なものは何かなどを考える、思考整理のためのツールとして使ってみることを、私はお勧めしています。

 例えば、上司から指示された仕事を受けたもののやり方が分からない場合、完成形が想像つかない(把握可能感)、前任者に聞いてみよう(処理可能感)などと整理していくと解決策のポイントが見えてくるのではないでしょうか。

 私自身も、問題が起きたときにこの3つの感覚を頭に浮かべて整理しています。特に、有意味感は非常に重要なポイントです。

 例えば、戦争や災害といった状況では、把握可能感と処理可能感はほとんど役に立ちません。先行きは見えないし、資源もほとんど期待できない。でも、そのような状態でも生きることの意味を見いだすことができれば、それはモチベーションとなり得ます。

 また、理不尽なことを要求されるようなブラックな職場環境でも、把握可能感と処理可能感はかなり低い状態だと思います。そのようなとき、「有意味感」を意識してみてはどうでしょうか。「ここで頑張ることは自分にとってどのような意味があるのか」を考えることで、行動指針が見えてくることがあります。

 意味や価値があれば、真摯に取り組むべきです。意味も価値もないと判断したのであれば、ストレスフルな状態でその環境に身を置く必要はないということになります。

──憂鬱にされないもう一つのスキルとして「アサーティブな表現」も挙げていました。

舟木:アサーティブとは、「自分も相手も大切にする自己表現」です。

 自己表現には、大きく分けて、以下の3つがあります。

・攻撃的なタイプ(aggressive):他者の気持ちや都合をあまり尊重せず、自分の都合を優先して主張する。
・非主張的(non-assertive):自分の感情や要求を抑えたり、後回しにしたりして相手を優先する。
・アサーティブ(assertive):相手を尊重しながらも、自分の意見や感情、要求を適切に表現する。

 例えば、後輩や部下から「上から目線ですよね」と言われたとします。非主張型の場合は、「先輩に対してそんな言い方は失礼では?」と思っても、相手との関係が悪くなることを恐れたり、嫌われたりするのではないかと思い、何も言いません。一方、主張型は相手の気持ちを尊重せずに、「なんなんですか、その言い方は?」などと声を荒げて言い返します。

 アサーティブ型は自分も相手も大切にした言い方です。「上から目線ですよね」と言われたことに対して「そんな風に言われると驚きますし、傷つきます」「『上から目線』とは具体的にどういうことですか」「改善できる点を教えてほしいです」というように、相手を否定せず、かつ自分の気持ちもきちんと伝える表現です。