小泉八雲(左)とセツ
(鷹橋忍:ライター)
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』では、主人公・松野トキと、トミー・バストウが演じるレフカダ・ヘブンが結ばれ、言葉の壁や文化や風習の違いに戸惑いつつも、幸せな結婚生活を送り始めた。二人のモデルである小泉セツとラフカディオ・ハーンの夫妻にも、幸せな結婚生活を思わせるエピソードがいくつも残っているので、今回はそれらをご紹介したい。
人力車から抱いて下ろす
明治24年(1891)2月初旬頃、小泉セツはラフカディオ・ハーンのもと住み込みで働くようになり、二人は同年6月に、松江市北堀町の武家屋敷で、夫婦としての生活をスタートさせたと考えられている(小泉八雲記念館『小泉セツ ラフカディオ・ハーンの妻として生きて』)。
この年の7月26日、ハーンは吉沢亮が演じる錦織友一のモデル・西田千太郎とともに夏休みの旅行に出かけた。
二人は出雲大社近くの稲佐の浜にある養神館(因幡屋別館)に投宿し、7月28日には、セツも合流している。
ハーンは因幡屋を常宿としており、滞在中、主にハーンの世話をしたのは因幡屋の養女・タニと女中のクニだった。
タニの話によれば、この時もタニとクニが養神館に赴き、ハーンの世話をすることとなった。
ある日、セツが乗る人力車が稲佐に到着すると、西田千太郎が、「見ちょれよ。ヘルンさん(ハーン)が、どげするか」と言ったため、タニは物陰に隠れて、様子を窺った。
ハーンはセツが乗っていることがわかると、人力車に駆け寄り、セツを抱いて車から降ろした。この時、ハーンはセツに、なにやら可愛い言葉を囁いたようだった。
タニは、このような光景を見たことがなく、ずっと記憶に残ったという(以上、梶谷泰之『へるん先生生活記』)。
この頃には、すっかり愛が深まっていたようである。