エリザベス・ビスランド
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(鷹橋忍:ライター)

今回は、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』において、トミー・バストウが演じるレフカダ・ヘブンに日本行きを勧めた女性記者、シャーロット・ケイト・フォックスが演じるイライザ・ベルズランドのモデルと思われる、エリザベス・ビスランド(ウェットモア夫人)を取り上げたい。

ラフカディオ・ハーンの心の恋人

 エリザベス・ビスランドは、レフカダ・ヘブンのモデルであるラフカディオ・ハーン(小泉八雲/ここではラフカディオ・ハーンで統一)の良き理解者であり、「心の恋人」ともいわれる女性である。

 ハーンは友人に宛てた手紙のなかで、エリザベス・ビスランドを、「背が高く、色白で、大きな黒い瞳と黒い髪を持ち、美人だという人も、可愛いという人もいる。私はどちらとも思わないが、肉体的にも知的にも、間違いなく魅力的」と称している(エドワード・ラロク ティンカー著 木村勝造翻訳『ラフカディオ・ハーンのアメリカ時代』)。

 まさに才色兼備であったエリザベス・ビスランドが生まれたのは、1861年2月11日のことである。

 1850年生まれのハーンより11歳年下、松野トキのモデルである、1868年生まれの小泉セツより7歳年上となる。

 父は、ルイジアナ州の大農場フェアファックス・プランテーションを所有するトーマス・S・ビスランド。母は、マーガレット・B・ビスランドである(平川祐弘監修『小泉八雲事典』)。

 エリザベス・ビスランドの誕生と同時期に、アメリカでは「Civil War」、日本では「南北戦争」と呼ばれることが多い内戦が勃発している。

 アメリカ合衆国の「南部」11州と、「北部」23州とに分かれて相争ったこの内戦において、ルイジアナ州はアメリカ連合国(南部連合)に加わった。

 内戦は1865年に南部の降伏で終結したが、ルイジアナは甚大な戦禍を被り、エリザベス・ビスランドの家は没落する。

 エリザベス・ビスランドが12歳の時、父が相続したミシシッピ州ナチェズにある家に移住するが、生活は苦しかった。

 この頃から、エリザベス・ビスランドは詩を書くようになったという(工藤美代子『夢の途上 ラフカディオ・ハーンの生涯〈アメリカ編〉』)。

 1881年には、「B・L・R・デーン」というペンネームで、ラフカディオ・ハーンが文芸部長を務めるニューオーリンズの新聞「タイムズ・デモクラット紙」に、詩を投稿するようになったとされる(小泉八雲記念館『ハーンを慕った二人のアメリカ人:ボナー・フェラーズとエリザベス・ビスランド』)。