チャイナタウン化が進む東京・池袋(写真:AP/アフロ)
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 日本には現在、約395万人の在留外国人がおり、その4分の1にあたる約90万人が中国からの移民である。日本に来る中国人移民とはどのような人たちなのか。なぜわざわざ経済成長を遂げた中国を離れて日本に移り住もうと考えるのか。『ニッポン華僑100万人時代 新中国勢力の台頭で激変する社会』(KADOKAWA)を上梓した日本経済新聞取材班の岩崎邦宏氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──日本の大都市と地方で、それぞれ異なる形で中国人人口が拡大していることについて書かれています。

岩崎邦宏氏(以下、岩崎):タワーマンションが立ち並ぶ豊洲や、東京大学がある文京区、ガチ中華と呼ばれる中華料理店などがひしめく池袋など、東京23区には最も多くの在留中国人が住んでいます。

 我々の分析では、日本の在留中国人の3割にあたる約24万人が23区に住んでおり、江東区の亀戸や江戸川区の小岩など都心の周辺部にも中国人の居住者が増えています。

 2025年6月の統計では、在留中国人の数は90万人を突破しました。この数は、新潟市、堺市、浜松市などの政令指定都市の人口を上回っています。

 さらに細かく在留中国人の分布を分析したところ、全国には1741の市区町村がありますが、その92%(1603自治体)に中国人が居住していることが分かりました。どんな小さな町や村に行っても中国人が居住しているということです。

 自治体の人口に占める在留中国人の割合を分析すると、北海道や長野県など、地方や特徴のある場所にも多くの中国人が居住していることが分かりました。

 北海道の中央に位置している占冠村は全人口が約1600人ですが、そのうち5%が中国人です。この村は北海道最大級のスキーのリゾート施設があり、スキーを楽しむ目的で移住した方が多いのではないかと思われます。

 同じく北海道の猿払村では、外国人研修生受け入れ特区という認定を得て、ホタテの加工技術を学ぶ中国人研修生が多く、人口の3.4%が中国人です。愛知県の飛島村やレタスの産地として有名な長野県の川上村など技能実習生が多い地域も中国人人口が多い地域です。

──過疎化が進む地方自治体が外国の学生を積極的に受け入れるため、結果的に一部の自治体で中国人の留学生ばかりが増えているという印象を受けました。

岩崎:印象に残っているのは、千葉県の鴨川市にある私立鴨川令徳高校です。この学校は全校生徒が104人で、その半数が中国人の留学生です。

 地域の過疎化によって入学者数が激減したこの学校は2012年に経営危機に陥り、経営再建計画を立てました。その柱の1つが留学生の受け入れでした。学費は年間200万円と高額ですが、中国で募集をかけると入学希望者が殺到するそうです。

 この学校の中国人留学生の側に話を聞くと、中国には「全国統一大学入試」と呼ばれるテストがあり、競争があまりにも熾烈で、中国での大学受験を避けたいと考える声が少なくありませんでした。「日本には配慮や思いやりがあるので自分の気持ちを外に言えないタイプの人にも生きやすい」と語る学生もいました。

 北海道の東川町は、過疎化で減った若者を補うために公立の日本語学校を作り、外国人の受け入れを始めましたが、約100人の生徒の3割が中国人の学生です。

 公立の学校ですから、税金が使われており、授業料と寮費の半額(年間およそ90万円)を町が負担しています。地域の店舗で使える「デジタル地域通貨」月8000円分を海外から来た生徒に支給しており、町としてサポートに力を入れています。

 公立の日本語学校を開く動きは他の地域でも見られ、宮城県の大崎市も開校しています。同じ宮城県の石巻市でも検討が進んでいます。全国で少しずつ、中国人の留学生を積極的に受け入れる動きが進んでいます。