西成では増加する民泊が社会問題になっている
出入国在留管理庁のデータによれば、2024年末時点で日本に住む外国人の数は約376万人と、2023年から2024年にかけて10.5%増加した。このうち、日本の永住権を持つ外国人は27万人だ。どのような国の、どのような人々が、どのような理由で日本に移り住むのか。外国人が著しく増加している大阪市西成区の西成労働福祉センターで外国人雇用支援担当を務める水内俊雄氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──水内さんは、日本に住む外国人の構成について分析されているとうかがいました。外国人の構成はどのように変化していますか?
水内俊雄氏(以下、水内):日本の外国人施策を考える場合に、在留資格という独自の制度の歴史と変遷を知ることが重要です。
1980年代に難民認定制度導入から入管法の制定があり、在留資格が職業・活動別に細分化されました。また、1991年に制定された特別永住層(従来の旧植民地出身者とその子孫の人々)に加え、外国人研修生制度の導入もあり、外国人が日本で働いて生活する体制が整備されました。
1990年代になるとブラジル、ベル―などの日系人の受け入れが始まり、定住の在留資格で就労が可能になった一方、留学や就学のビザで多くの中国人が日本で学び、あるいは働くルートもでき始めました。
同時に「単純労働を受け入れない」という日本の大原則があったので、その代替的な意味合いで、興行ビザでフィリピン人などを受け入れ、技能実習(帰国が前提の実習)という形で、中国や東南アジアから働く人を受け入れるようになりました。
──出身国・地域によって、入ってくるルートが異なるのですね。
水内:中国人は1980年代から、留学、就学、そして技能実習という形でさまざまな層の人が日本で働いてきましたが、王道は技人国ビザ(※)を取り、働く基盤を固め、永住や帰化をするという流れです。この層が2010年代に確立し、日本で確固とした経済基盤を持つようになりました。
※技人国:在留資格「技術・人文知識・国際業務」の略称。専門的な技術や知識を活かして働くための在留資格。
コロナ後、特に経営・管理の在留資格は、技人国のような積み上げのルートを取らずに、小規模な資本のみで日本での経営を実体化できるため、長期間の努力で永住権を手に入れた層は、こうした新しい層の動きに苦々しい気持ちを持っていることもあります。
一方で、もちろん日本への中国人の移住に、同郷のネットワークというのも働いています。私がいる西成区では福建省の福清の人が多いのも、従来の華人ネットワークが効いているからだと思います。
ただし、中国人の定住には、これとは異なるルートも存在します。1980~90年代には、中国残留孤児およびその家族として日本に来た人々が、定住の在留資格を通じて生活基盤を築いてきました。この層は言語・教育・就労の面で困難を抱えつつも、地域社会に根ざした生活を送っています。
今日の在日中国人社会は経済的・社会的階層の差を有する多層的構造となっており、来日の動機や目的だけでなく、日本社会への関わり方や帰属意識のあり方にも差異が見られます。同時に政治や経済の動向、制度の変化にも敏感で不安定な面も併せ持っています。