メダカは頭の中で紫外線を感じ取り、ホルモンを放出、体色を濃くして紫外線を防御する(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)
太陽光は私たちの体に恵みをもたらす一方、太陽光に含まれる紫外線は細胞を傷つける危険性がある。近年、メダカが頭の内部で紫外線を感知してホルモンを放出し、体色を濃くすることで紫外線を防御する仕組みが世界で初めて明らかになった。この発見は、ホルモン制御の常識を覆すものだ。
研究のきっかけから紫外線防御の詳細なメカニズム、そして今後の展望まで、本研究をおこなった福田彩華氏(基礎生物学研究所 神経行動学研究部門 日本学術振興会特別研究員PD)に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)
──「メダカが頭の内部でも紫外線を感知している」という研究をするに至った経緯を教えてください。
福田彩華氏(以下、福田):この研究は、私の修士・博士課程の指導教員である東京大学大気海洋研究所の神田真司准教授が偶然発見した「未知の現象」からスタートしました。
それは、神田さんがメダカの脳下垂体(※1)において、カルシウムイメージング(※2)という手法により、ホルモンを分泌する細胞(ホルモン産生細胞)の応答を観察しようとしたときに見つかったものです。
※1:脳下垂体:脳の底部にくっついており、視床下部からの指令を受けて各種ホルモンを放出する内分泌器官。視床下部と密接に連携し、ホルモンを血中に放出することで全身の内分泌腺をコントロールする重要な役割を果たす。
※2:カルシウムイメージング:細胞内カルシウムイオン濃度変化を可視化するための技術。観察の際には、対象物に特定波長の光を照射する。
その未知の現象とは、観察時の光に対して、MSH(黒色素胞刺激ホルモン)という体色を黒くするホルモンの分泌細胞(以下、MSH産生細胞)の蛍光強度が数秒でみるみるうちに強くなっていくというものです。
ホルモン産生細胞にとって、細胞内カルシウムイオンの上昇はホルモン放出を意味します。つまり、カルシウムイメージングの光照射に応じて、MSHが放出されているということです。
修士課程の進学先を決める際に、神田さんの研究室に相談へ行ったところ、その「未知の現象」を紹介してもらいました。もし脳下垂体が光を受け取ってホルモンを放出していたら、それは世界的に見ても当時は報告されていない現象だと神田さんから聞き、面白そうだと湧き出てくる好奇心から、神田さんのもとで「未知の現象」の研究を始めました。
──今回の研究のプレスリリースには、「Opn5m」という言葉も登場しました。
