取材に関する新しい規制を発表したヘグセス長官(写真:代表撮影/UPI/アフロ)
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 米国防総省が発表した新しい規定が議論を巻き起こしている。新しい規定では、安全保障に関わる内容は、国務総省が許可を出したものしか報道機関は報じることができず、許可を取らずに国務総省の職員に情報提供を求めてはならない──というものだ。

 同省は10月14日までに、報道機関に誓約書への署名を求め、応じない場合は取材記者証(プレスパス)をはく奪し、庁舎への立ち入りを制限すると宣言したが、リベラルから保守まで主要メディア各社は署名を拒否した。

 トランプ政権の意図はどこにあり、アメリカの報道はどうなっていくのか。ジャーナリズムが専門で、アメリカの憲法修正第1条を研究するペンシルベニア州立大学のエイミー・クリスティン・サンダース教授に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──国防総省が発表した新規則についてどう思いますか?

エイミー・クリスティン・サンダース氏(以下、サンダース):この新しいルールは、国防総省と報道機関の関係の新しい出発点であり、今回のようなルールの制定は前例のないものです。

 米国防長官のヘグセス氏は、これまで報道機関との間で軋轢がありました。今回のルール制定は報道機関に復讐したい気持ちと、国防総省や米政府を報道機関から守ろうという意図が反映されています。

 制限を加えて取材を難しくすることで、報道機関が国防総省に批判的な記事を書いたり、あるいは不利になるような記事を書いたりすることを防ぎたいのです。

──多くの報道機関がこれらの新規則への署名を拒否しています。

サンダース:ニューヨーク・タイムズ、CNNなどのリベラル系メディアから、ウォール・ストリート・ジャーナルやFOXニュースのような保守系メディアまで、ほぼすべての独立系大手ニュースメディアが署名を拒否しました。

 トランプ政権との関係性にかかわらず皆が署名を拒否したのは、報道機関としての独立性が保てなくなると考えたからでしょう。メディアの役割は権力の監視であるということを理解している証拠です。

 では、署名に賛成したのはどこかというと、ワン・アメリカ・ニュース・ネットワーク(OANN)という右寄りのケーブルニュース、ザ・フェデラリストという右傾のオンラインメディア、複数の右派ポッドキャストチャンネルなどです。

 また、一定数の海外メディアなども署名しました。海外メディアからすると、国務省から情報がもらえなくなるととても困るのでしょう。外国では、そうした規制はあって当たり前という場合もあります。

──国防総省の発表は、米国憲法修正第1条の「報道の自由」を侵害しているのではありませんか?