最高裁を都合よく活用しているトランプ大統領
──トランプ政権は常々、自分たちの主張が違憲かどうか、法的に正しいかどうかを必ずしも考慮していないという印象を受けます。とにかく自分たちの考えを強引な主張にして発表する。その結果、訴訟になり負けるかもしれないが、それでも構わない。どこかそのような態度に見えます。
サンダース:その通りです。トランプ政権はイメージと虚勢によって成り立っています。自分の支持者にアピールすることを重視しているのです。
これまでもトランプ大統領の提案は次々と提訴され、法廷で却下されてきました。特に地方裁判所で却下されています。でも、トランプ大統領は自分には最高裁を操る力があると思っている。ですから、上告して最高裁まで持ちこめば、自分が都合よく戦えると思っているのです。
この政権は、これまでの政権とは全く異なる形で最高裁を使います。ある意味では興味深い手法かもしれません。
下級裁判所で退けられた件を、最高裁に緊急請願(emergency petition)という形で提出して判決を覆す。トランプ政権はこの異例とも言えるやり方を使って、かなりの成功を収めています。
公平な審議を経て答えが出ていないにもかかわらず、法律に詳しくない人から見ると、トランプ大統領が勝ったように見える。
一方で、自分の作った枠組みが長期的にどんな影響を与えるかをトランプ大統領は考慮しません。その場で勝ったように見えればいいのです。
最初に、ヘグセス国防長官からこのメディア規制の提案を受けた時に、「報道を規制するのはいい考えとは思えない」とトランプ大統領は答えたそうです。でも、少し考えて、このアイデアは注目を集めるからやったほうがいいと考えを切り替えた。政権が報道機関に弱腰でないことを示せるからです。
──日本では、政府機関が開催する記者会見では政府が管理する情報しか提供されず、そこで聞いた内容を批判的に報じると、政府関係者との関係が悪化し、情報が得られなくなるため、記者が飼いならされているとよく言われます。こう考えると、報道機関が政府に依存しなくなるのはむしろ良いことかもしれません。