渡邊真衣受刑者は1000万円はくだらないシャンパンタワーにダイブしたという(写真:makoto.h/イメージマート)
恋愛感情を抱かせて複数の男性から合計1億5000万円以上を騙し取った、「頂き女子りりちゃん」を名乗る女性が2023年に逮捕され、1月に懲役8年6カ月、罰金800万円の実刑判決が確定した。彼女は騙した男性たちを「おぢ」と呼び、男性を惑わして金を引き出す手順を記した「恋愛マニュアル」という情報商材を作成・販売し、2000万円以上も稼いでいた。荒稼ぎした金は歌舞伎町のホストクラブにすべて消えていた。
独特の喋り方やファッションで型破りなキャラクターを演じた渡邊真衣受刑者の素顔とはどのようなものなのか。『渇愛 頂き女子りりちゃん』(小学館)を上梓したノンフィクションライターの宇都宮直子氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──事件化される前から、SNSを通して渡邊受刑者を目にする機会があったと書かれています。彼女は逮捕前からどのように目立っていたのですか?
宇都宮直子氏(以下、宇都宮):すさまじいお金の使い方をして、その様子をSNSにアップする姿が印象的でした。1000万円はくだらないシャンパンタワーを立て、その頂に据えた高級ボトルに、スワロフスキーで「破滅」という文字のデコレーションを入れて、そこに自らダイブして何針も縫う大ケガをして救急車で運ばれたことがあります。
一方で、繊細な言葉で自分の心情を吐露するようなコメントを書いてもいて、いつか死んでしまうのではないかと周囲を不安にさせる危うさも見られました。注目の集め方はただ者ではないという印象がありました。
──男性からお金を騙し取る手段を人に教えていたそうですね。
宇都宮:彼女はオンラインサロンを運営していました。そこに彼女を真似して稼ぎたい主に夜の世界の女性たちが集まり、彼女の作ったマニュアルを買ったり、レクチャーを受けたりしていたのです。参加者の名前を覚えて、一人ひとりに丁寧にアドバイスをしていたそうです。
集まりは次第に先鋭化していき、最終的には彼女のファンたちが残り、彼女を囲むサークルめいた集団になっていきました。
──「ミュージシャンおぢ」と名付けられた男性のエピソードは印象的でした。
宇都宮:渡邊さんが騙していた男性の1人が音楽好きで、その人との電話の会話をオンラインサロンで勝手に公開していたのです。彼女はレクチャーの一環で、自分とおぢたちとのやり取りをコミュニティ内で公開することがありました。
電話の会話では、男性が演奏を始めたら渡邊さんが合わせて即興でラップを始めたと聞いています。彼女のラップが様になっていて、とても盛り上がったそうですが、ミュージシャンおぢ本人は、そんな風に自分のやり取りが得体のしれないコミュニティの中で公開されていることは知りませんでした。
私はそのコミュニティには参加していませんが、そこに参加していたというアーティストの増田ぴろよさんからその時の様子を聞きました。
渡邊さんは抗精神剤やアルコールなどでパキった状態にあったことも多く、本人はそうしたコミュニティでのやり取りの記憶をかなり忘れてしまったそうです。
