日本の排他的経済水域(EEZ)。右下の離れた円が南鳥島周辺(Gugganij, CC BY-SA 3.0 南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)に、およそ1600万トン(世界3位の埋蔵量に相当)のレアアースが眠っている。2013年に、東京大学と海洋研究開発機構(JAMSTEC)が共同調査を実施して、水深5700メートルの深海にレアアースを高濃度で含む「レアアース泥」を発見した。
レアアースの調達において中国に依存してきた日本は、ここから独自の活路を見出すことができるのか。地質学者で、海底資源を研究する中村謙太郎・東京大学大学院工学系研究科附属エネルギー・資源フロンティアセンター教授に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──現在、日本のレアアースの調達はどのような状況なのでしょうか?
中村謙太郎氏(以下、中村):まず、現在日本国内にはレアアースの鉱床はありませんので、レアアースは100パーセント輸入に頼っています。
2010年のレアアースショック(※)以来、日本だけではなく、世界中が資源の多角化を模索してきました。特に強いダメージを受けた日本は、オーストラリアを含む海外の鉱山の開発に積極的に取り組んできました。それでも、日本が輸入するレアアースの約7割は、依然として中国からというのが現状です。
※中国が日本へのレアアースの輸出を制限する中、2010年9月7日、尖閣諸島で中国漁船の衝突事件が発生し、日本の検察が中国人の被疑者を起訴する方針で拘留延長したところ、数日後に中国からのレアアースの輸出が停止されたと日本のメディア各社が報じた。
──南鳥島周辺の海底でレアアースを高濃度で含む「レアアース泥」が発見され、中村先生は調査に中心的に関わっています。どのような発見なのか教えてください。
中村:私たちは2013年に、JAMSTEC(海洋研究開発機構)と共同で調査し、南鳥島の南方海域、海底の表層近くに非常に質のいいレアアース泥が分布していることを発見しました。
さらに、2018年には最も有望な2500平方キロメートルの海域を特定し、そこに1600万トンのレアアースが存在することをイギリスの科学論文誌に公表しています。
──世界3位というのはすごいですね。
中村:確かに相当な資源量ですが、この2500平方キロメートルというエリアは、EEZ全体のわずか1%という面積です。調査を進めれば、南鳥島のEEZからもっとレアアースが見つかるはずです。
──レアアースの海底採掘に関して、日本はどのような技術を持っているのでしょうか?