放射能元素を含んでいないレアアース泥
──レアアースの生産に関して、なぜ中国は世界的に圧倒的な存在になることができたのですか?
中村:ひとつは中国の優れた戦略眼だと思います。金属資源の中で、レアアースを人類がさまざまな産業用途に使い始めたのはまだ数十年前のことです。その時点では、どこの国もこれほど重要な資源になるとは考えていなかったでしょう。
にもかかわらず、中国のトップだった鄧小平は1992年に「中東には石油があるが、中国にはレアアースがある」と発言。そこから着々と市場を独占する努力を続け、同時に競合が現れると価格調整で抑え込んできました。各国がレアアースの重要性に気付いたときには、時すでに遅しという状況になっていたのです。
中国がレアアースの開発で強くなった理由は他にもあります。陸上のレアアース資源は放射性元素を含んでいます。また、レアアース品位の高い良い鉱山ほどウランやトリウムも大量に含まれています。
こうしたレアアースを処理(製錬)すると、残りは放射性廃棄物になりますが、放射性廃棄物は簡単には廃棄できません。それが中国以外の国々がレアアースの生産から手を引いていった理由でもあります。
オーストラリアにもレアアースの優良な鉱山がありますが、国内では放射性廃棄物を捨てられないので、マレーシアに運んで製錬しています。中国は国内でレアアースが採れ、なおかつ国内で放射性廃棄物も引き受けてくれるので、(レアアースを輸入する)海外の企業にとっても使いやすかったのです。
──日本で採掘する場合も、放射性廃棄物は問題になりませんか?
中村:海底から採れるレアアース泥は、陸上のレアアース鉱床とはでき方がまったく違うので、唯一例外的に放射性元素を含んでいません。そのため、採掘で出る泥を、埋め立てのような別の用途に使用できます。
レアアース鉱石だけ採れても、国内で製錬できなければ意味がありませんから、放射性廃棄物の出ないレアアース泥は日本にとって非常に扱いやすく、願ったり叶ったりの資源と言えます。
──なぜ南鳥島はレアアースがそれほど採れるのでしょうか。他の海域にも、同じようにポテンシャルはありますか?